CONTENTS
1.知っていると思いが深まる!お食い初めの基礎知識
2.お食い初めはいつ行えばいい?日取りの決め方と地域差
3.お食い初めの準備をしよう!
4.どこで行う?お食い初めを行う場所の決め方
5.手順をおさえてスムーズに!儀式のやり方
知っていると思いが深まる!
お食い初めの基礎知識
まずはお食い初めに込められた意味からチェックしていきましょう。
「お食い初めは、『100日祝い(ひゃくにちいわい)』、『百日祝い(ももかいわい)』とも呼ばれ、生後100日のお祝いをする行事です。鯛やお赤飯、お吸い物など一汁三菜のごちそうを用意しますが、欠かせないのが歯固めの石。歯が生え始める頃の赤ちゃんの歯茎に歯固めの石を触れさせることで、石のように強く丈夫な歯に恵まれて、食べることに困らず長生きができるようにと願います」(和文化研究家・三浦康子さん、以下同)
画像提供:「お祝い膳.com」
お食い初めは平安時代頃より始まったとされています。
「栄養状態や衛生面、医療体制も整っていない時代は、『生きることは食べること』でした。赤ちゃんがすくすくと育つのは簡単ではなかったので、100日間無事に生きてきたことを祝福し、ここから先も無事に成長するよう祈りを込めて、お食い初めが行われるようになったのです。平安時代は『五十百日之祝儀(いかももかのしゅぎ)』という儀式で餅を用意し、鎌倉時代には魚を初めて口にすることから『真魚始め(まなはじめ)』とも呼ばれるようになりました。初めて箸を使うことから『箸揃え』『箸初め』『箸祝い』などとも言います。やがて『食い初め』と呼ばれるようになり、祝い膳を用意して『歯固め』の儀式をする伝統が今も続いています」
お食い初めはいつ行えばいい?
日取りの決め方と地域差
画像提供:「お祝い膳.com」
お食い初めの日取りはどのように決めていけばよいのでしょうか。
「歯が生え始めるのが生後100日くらいであり、節目という意味でもキリのよい日数なので、100日目ちょうどにこだわるというのはひとつの選択肢ですね。しかし、赤ちゃんの体調や気候、家族のスケジュール調整などもありますので、100日目を過ぎても問題ありません。100日が過ぎたあとの土日や、大安吉日で行うご家庭が多いようです。地域によっては、生後110日目、120日目に行うところもあります。お食い初めの日を先に延ばすことを『食いのばし』といい、長生きができると考えられています」
100日目近くに行うのが主流の地域と、食いのばしが多い地域があるようです。
「京都を中心とした関西地域は、長寿への願いを込めた『食いのばし』を選び、お食い初めは生後120日を過ぎた頃に行う傾向にあります。母乳やミルク中心の日々から離乳食へと切り替えていく節目のお祝いという位置づけで考えれば、少し遅めに行いたいという考え方もあるでしょう。東北や北海道などの雪国では、雪の降り積もった時期に100日目を迎える場合、食いのばしをして雪解け後に行う方が、赤ちゃんに負担がかかりませんね。また、寒い時期を避けて、お宮参りとお食い初めをセットで行う方も少なくありません」
画像提供:「お祝い膳.com」
日程を決めるときのコツや大切にしたいこととは?
「まずはお子さんの100日目がいつなのかを確認します。誕生日を入力して節目の日程を確認するサイトや自動で計算してくれるアプリを使うと便利です。そして、生後100〜120日あたりの中で、都合のよい日程を決めていきます。赤ちゃんは体調を崩しやすいので、昼か夜かなどの時間帯も含め、候補日は多めに設けておきます。親族のスケジュールが合う日が仏滅のような日取りであったとしても、親族間で同意が得られれば問題ありませんので、祝福する気持ちを優先してください。そして、赤ちゃんが成長したときに、家族でお祝いしてもらえたことが実感できるように、写真や動画などで記録してあげてくださいね」
お食い初めの準備をしよう!
ここからは具体的な準備の内容へ。余裕を持って進めていくには、いつから準備を行えばよいのでしょうか。
「お祝い膳をすべて自分で調理する場合は、1ヵ月前くらいから準備を始めると慌てずに進められます。ただし、赤ちゃんのお世話や仕事があり、なかなか準備に手が回らない状況もあると思います。そういう場合は、市販のお食い初めのセットを利用したり、料亭やレストランなどのお食い初めプランにしたりするのもおすすめです。ママやパパが無理なく進められる方法で準備を行いましょう」
<準備するもの>
1.歯固めの石
丸くてつやのある3〜5cm程度のものが理想ですが、ママやパパが気に入った石であれば問題ありません。産土神や氏神様を祀っている神社の境内、または河原の石を拝借し、煮沸消毒をしてから使用して、後日お返しします。お宮参りのときに神社から授かった場合には、それを使います。最近はネットショップなどでも購入できます。
2.一汁三菜のお祝い膳
▶︎祝い鯛姿焼き
『めでたい』という語呂でも、認知の高い鯛の姿焼き。尾頭付きは人生を全うすることに通じて縁起が良く、赤色は魔除けになると言われているため、古くからお祝いの席で振る舞われています。
▶︎ご飯(お赤飯)
赤色には魔除けの意味があるとされ、小豆で赤く染まったお赤飯は、おめでたい席に欠かせない食べ物。赤ちゃんの健やかな成長を願うお祝いにぴったりです。
▶︎お吸い物
蛤や鯛など、出汁の風味を感じられるお吸い物を用意します。定番の対になっている貝はぴったりと重なり合うことから、良縁を意味します。
▶︎煮物・和え物
おめでたい食材や山海の幸を焚き合わせた煮物、紅白なますなどの和え物か漬物など、お膳が華やぐような副菜を無理のない範囲で用意しましょう。
3.食器・祝い箸
画像提供:「お祝い膳.com」
昔ながらのやり方では、母方の実家から贈られたお食い初め用の漆器を用意します。しかし、何度も使うわけではないので、レンタルを使うという方も。最近は漆器セットを用意せずに、離乳食でも使えるような食器セットやプレートで行う方も増えています。祝い箸は、両口とも削ってある両口箸で、一方を神様用と考え、神様と一緒に食事をすることを意味します。主に柳の木でつくられ「家内喜箸(やなぎばし)」とも言い、慶事には欠かせないお箸です。
ネットで購入できる冷凍のお食い初めセットは、赤ちゃんの体調や急な予定変更があっても安心です。
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どこで行う?
お食い初めを行う場所の決め方
自宅か料亭やレストランなどで行うのか、どちらがいいのでしょうか?
「本来は家で行うものですが、両家の祖父母を呼んでにぎやかにお祝いしてあげたい場合、住宅事情や準備の都合などにより自宅で行うのが難しいこともあると思います。そういう場合は、お食い初めコースのある料亭やレストランで行うのがおすすめです。どちらがいいというものではないので、ご夫婦や祖父母で話し合って、好ましい方を選択してくださいね。料亭やレストランで行う場合は、基本的に事前に準備するものはありません。ただし、お祝いに参加する人数によってかかる費用が変わってきます。1人あたり¥3,000〜10,000くらいが目安になりますが、予約前に料理のコースを確認しておきましょう。土日の吉日は予約が取りづらい場合もあるので、早めにスケジュールを決めることも大切です」
手順をおさえてスムーズに!
儀式のやり方
お食い初めは、食べさせ役とお料理を口元に持っていく順番が決まっています。
「赤ちゃんに食べさせるマネをする役を『養い親』と呼び、長寿にあやかるという意味で、お祝いの場に同席している中の一番の年配者が行います。男の子には男性、女の子には女性が行うのが習わしです。最近は、あまりしきたりにこだわらずに、みんなで交代に食べさせ役をすることもあります。赤ちゃんが大きくなったときに、写真や動画でお食い初めの様子を見ることを見越して、ママやパパ、おじいちゃんやおばあちゃんのみんなで順番に食べさせ役をやっている様子を撮影しておいてもよいでしょう。お料理を赤ちゃんの口元に運ぶ基本的な流れは、お赤飯を中心に進めていきます。祝い箸を使い、ご飯→お吸い物→ご飯→魚→ご飯→お吸い物を3回繰り返し、歯固めの儀式をする流れになります。魚のほかに煮物や和え物を入れる方法もあり、地域によっても違います」
①ご飯→お吸い物→ご飯→魚→ご飯→お吸い物
②ご飯→お吸い物→ご飯→魚(または煮物)→ご飯→お吸い物
③ご飯→お吸い物→ご飯→魚(または和え物)→ご飯→お吸い物
④歯固めの儀式
◆歯固めの儀式
歯固めの儀式では、赤ちゃんの歯茎に石を当てたり噛ませたりするなど、さまざまな方法が用いられてきましたが、誤飲や事故の恐れもあるので最近では赤ちゃんの歯茎に直接触れることは避けるようになっています。歯固めの石に祝い箸を軽く当てて、その箸を「石のように丈夫な歯が生えますように」という願いを込めて、赤ちゃんの歯茎にやさしくちょんちょんと当てるようにしましょう。
「昔は自力で食べられないと生きていけない時代でした。そのため、丈夫な歯になることは、わが子の健やかな成長と長寿に直結することだったのです。そういう視点では、お食い初めの中でいちばん大切なポイントは、歯固めの儀式だと言えます。日本にはお正月に鏡開きをする習慣がありますが、これも歯固めの儀式に由来し、硬くなったお餅を食べることで、歯が丈夫であり続けられるようにという願いを込めています。年齢の齢という字に歯が入っているのも、生きる上で歯がとても大切だという考えが現れています。これから歯を使って食事をしながら生きていく赤ちゃんを祝福する儀式が歯固めです。そこまで知っていると、お食い初めに対する思いが深まるのではないでしょうか」
育児に追われている日々の中で、行事の準備をするのは大変なことです。しかし、その行事に込められた意味を理解して準備を進め、その様子をしっかりと記録に残す。やがて成長したお子さんは、「こんなに愛されていたんだ!」と振り返ることができます。一生に一度の大切な行事、ご家族みんなで存分に楽しみ、思い出深い1日を過ごしてくださいね。
三浦康子さん
和文科研究家。いにしえを紐解きながら今の暮らしを楽しむ方法をテレビ、ラジオ、新聞、雑誌、WEBなどの媒体や講演会などで発信している。日本の行事は愛情表現であり、子育てを豊かにするものであるという確信から、子育て世代に「行事育」を提唱している。『子どもに伝えたい 春夏秋冬 和の行事を楽しむ絵本』(永岡書店)、『赤ちゃん子どものお祝いごとがわかる本』(朝日新聞出版)など著書・監修書多数。
和文化研究家・三浦康子公式HP
和文化研究家公式HP
撮影・資料協力:お祝い膳.com
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