気づいたら私の人生には
アンパンマンがいた

―台本を読まれて、どういった印象を持たれましたか?
子どもたちが見たらチャポンの成長物語だったり、アンパンマンのヒーローとしての姿に感動したり、興奮したりするだろうなと思ったんですけど、大人からしたら私たちの日常だったり、ニュースで見聞きすることとのリンクや、アンパンマンの強さの本当の意味を感じて、もう「うう……っ」と胸が苦しくなるというか。描かれている世界が残酷でもあるので、すごい作品だなと思いました。
―チャポンを演じるにあたって、どうやって声をつくり上げていったのでしょうか。
台本だけを読んだときはやわらかい、幼い感じの子かなと思っていたんですけど、絵が上がってきたら意外と眉毛がキリッとしていたり、私が考えていたより少し年齢が高い子なんだなと思いました。そこから何度も何度も「どういう声なんだろう」と台本や予告編の動画を観て探って、何パターンか想像はしていたんですけど、1パターン目で監督が「それでお願いします」と言ってくださって。とにかく純粋で明るい男の子からスタートして、チャポンがいろんな経験をすることできっと声も変わっていくだろうなと思っていたら、収録のときに監督から「一番大きく変わるところは今までのチャポンとは違っていいので、思いっきりアンパンマンの背中にぶつけるような気持ちで言ってみてください」と言われて、思いっきりやってみたら「それです!」と言っていただけて奥が深いなと思いましたし、すごくいい経験をさせていただきました。
―声に関しては監督とお話することも多かったのでしょうか。
恥ずかしくてもとにかくベストを探りたいと思っていたら、監督が「最初に録ったのを一度聞いてみてください」「どうですか?」と私の不安を取り除くように話してくださって。それは急にアンパンマンのもとにやってきたチャポンが、しょくぱんまんやカレーパンマン、ジャムおじさんとか、みんなに受け入れてもらえたように、突然やってきた私たちゲスト声優を、アンパンマンを今までずっとつくられてきた方たちが仲間に入れてくださったこととリンクして本当に感動しました。


―チャポンとご自身が似ていると思うところはありますか?
人に対して憧れを持つところは似ているかなと思います。私も人の素敵なところを見るのがすごく好きで、前までは恥ずかしいと思っていたんですけど、あるときから人の素敵なところを伝えることに照れがなくなって言えるようになりました。チャポンほど思いっきりはいけないですけど(笑)、同じ気持ちが私の中にもあります。
―幼少期のアンパンマンにまつわる思い出はありますか?
気づいたら私の人生にアンパンマンがいたんですよね。絵本だし、アニメだし、架空のキャラクターなはずなんですけど、もはや実在しているかのようにアンパンマンって自分の記憶が始まる頃からいて、そういう存在ってたぶんアンパンマンくらいで。しかもそのときだけじゃなくて、そこからずっと居続けるというのがアンパンマンの特別なところだと思います。
―幼少期と今とで好きなキャラクターは違いますか?
ずっとみんなを好きですけど、幼少期はてんどんまんが可愛くて好きでした。大人になってからはジャムおじさんってすごく素敵だなと思って。アンパンマンのお父さんのような存在というか、「だれかひとりでも喜んでくれる人がいれば」と気持ちを込めて嵐の夜に一個だけつくったアンパンがアンパンマンで、アンパンマンはそのときの思いを受け継いでいるので、ジャムおじさんってすごいなと思っています。
まわりに助けを求めることは、
抱きしめるのと同じくらい
すばらしい愛情表現

―蒼井さんが子育てで大切にしていることや、心がけていることはありますか?
子どもがまだ幼いということもあって、「何かを達成することよりも、それをやろうと思ったことがすばらしい」「成功しても失敗しても、何もできなくても、私はあなたのことがものすごく好きだ」ということを言葉で伝えるようにしています。
―なぜそう伝えていこうと思ったのでしょうか。
失敗を恐れず、挑戦することにワクワクする人であってほしいと思っているのと、「成功したことを褒めてもらいたい」と基準が私にならないように、オリジナルの感性を大事にしてほしくて。成功しても失敗しても、その過程にどんな感情を持ったかを大事にしてほしいと思っています。
―お子さんに伝わっている感覚はありますか?
……と思いますけど、大人になってから聞いてみます(笑)。

―ひとりの女性として、自分を大切するための方法や息抜きの時間はありますか?
息抜きはお友だちと会っておしゃべりしたりですかね。私は子どもといて本当に楽しいですし、子どもの友だちといても、ママたちといても楽しいから、息抜きがそんなに必要じゃないというか。自分が子どもを育てたり、ママたちや地域の人たちと関わることをまったく想像してこなくて、今も考えもしなかったことばかりが起こるんですけど、ずっと楽しくて好奇心が止まらないです。でもこれは性格じゃなくて体質の問題もあるかなと思っています。私がここまで合うんだったら、全然合わないという人がいてもおかしくないと思うようにもなりました。子育てに対してうまくいかないと悩んでいる人は自分を責めなくて大丈夫だし、手を差し伸べてくれる人が世の中にはたくさんいるということだけは忘れないでほしいです。「うちの子、ちょっと見てもらえますか」「助けてください」と伝えることは、私が子どもに「最高だね!」と抱きしめるのと同じくらい大切な愛情表現だと考えるようになりました。
―蒼井さんがこれから挑戦したいことはありますか?
私は社会と繋がりたいなという気持ちがものすごく強くなってきています。自分が受けた恵みって誰かに渡さないと何の意味もない気がしてきて、社会貢献と言ったらちょっとおこがましいですけど、社会活動みたいなことでほんの少しだけかもしれないけど、だれかの役に立てることってないかなと考えています。実際に目の前で人と人とで交流するということができたらいいなと思っています。

―最後に、HugMug読者にメッセージをお願いします!
お子さんと映画館に行ったことがないという方がいらっしゃると思うんですけど、『アンパンマン』の上映では音が抑えられていたり、照明も明るいままだったり、安心して観に行ける環境が整っているので、「子どもが座っていられなかったらどうしよう」という心配をすることなく、ジュースを飲んだり、ポップコーンを食べたりしながら、のびのびした時間を過ごしていただきたいです。そしてこの作品を観て、本当のやさしさがあるからこそ出る勇気というものにお子さんと一緒に触れていただけたらなと思います。
大人になった今だからこそ感じられた『アンパンマン』の魅力や、子育てで大切にしていることを教えてくれた蒼井さん。この夏、映画『アンパンマン』を観に行けば、お子さんの笑顔と力強くあたたかな物語から、ママ&パパも元気と勇気をもらえるはず。


いつものようにパトロールをしていたアンパンマンは、空から落ちてきた不思議な男の子・チャポンと出会う。チャポンはアンパンマンたちと一緒に過ごす中で誰かを助け、笑顔にする喜びを知るが、実はその出生にはある秘密があった――。声のゲスト出演として、チャポンを蒼井 優さん、ロボ2号ほかをパンサーのみなさん、モオさんを南海キャンディーズのしずちゃんが演じる。
大ヒット上映中!
©やなせたかし/フレーベル館・TMS・NTV ©やなせたかし/アンパンマン製作委員会2025













