自分らしい色を見つけていく
『みんなのいろいろ』ってどんな絵本?
誰もがフェアに楽しめる、勝負できる、輝ける。それがスポーツの世界だと信じてきた。けれど、ジェンダーやセクシャリティの問題で、スタートラインに立てないアスリートたちも世界には数多くいます。誰もが自分らしく輝ける未来を目指したい。スポーツの未来を担う子どもたちのために何ができるだろうという疑問からスタートし、清水文太さんが文章を担当、グラフィックデザイナーのMacciuさんがイラスト、サッカー選手の下山田志帆さんがアドバイザーとなって、NIKEのサポートのもとに絵本『みんなのいろいろ』が完成しました。絵本は下のリンクボタンから無料で読むことができます。
“いろ”に込めた想いを
物語の作者・清水文太さんへインタビュー
Instagram:@bunta.r
自分の色を自由に選べること、
大人にも子どもにも伝えたかった
この絵本は、色によって線引きされた世界から始まります。色によって決められたルールがある世界。でも、本当は自分の好きな色をもっともっと自分で選んでいい。そんな物語から、自分の性を含めて、さまざまな選択肢を持っていいという想いを込めました。もちろん、子どもが自由に選ぶには、大人が「こういう世界もあるよ」って教えてあげることが大前提。そこから、自分なりにどう動くかだと思うんです。
一度自分で決めたことだって
最後まで貫かなくてもいい
ただ、いったん決めたことでも、後からそれを変えていいことを知って欲しい。「以前は男性が好きだったけど、今は女性が好き」とかね。そんな身軽な気分でいいと思うんです。ガチガチに初めからすべてを決めなくていいし、「この時はこうだったけど、今はこう」って方向転換する方が自然。僕は10代の頃にワンピースを着ていたけど、別に女性になりたかったわけじゃない。男性としてワンピースを着たかっただけで。「あの人はジェンダーレスだ」なんて、そもそもジェンダーレスって言葉さえいらないと思うんです。
自分の世界で創作するのではなく
多くの人との対話から生まれた
制作するうえで気をつけたのは、間違った認識や偏見につながらないようにすること。僕はジェンダーの専門家ではないので、専門用語はあまり使わないようにしました。あと、教本にしたいわけではなかったので、「もっとフラットにできないかな」と考えて、制作途中からセリフを入れたんです。そこから自分の表現ができたような気がしますね。この本は、自分だけでなく、編集さんや制作に関わったスタッフさんなど、多くの人と何度も会議を重ねてできた本。言葉選びに時間がかかりましたが、いろんな人との対話の中から生まれたことが本当によかったと思います。
性を一緒に考える時間があると
子どもはラクになる
子どもが自分の色を探しているとき、例えば、自分の性について悩んだときに、大人がどう接するのがいいか。子どもってうまく言語化できないでしょう? わからないことが一体何かもわからない。自分が何に悩んでいるのかわからなくてモヤモヤする。だったら「何をしているときが楽しい?」とか「何か困っていることある?」とか、まずは大人と子どもで一緒に考える時間を持つことが大切。たとえ、それが解決にならなくても。時間を共有するだけで、孤独にならないと思います。
大人も子どもも一緒に
絵本を活用して欲しい
僕は、さまざまな場所、地域でこの絵本の読み聞かせを行っています。子どもだけでなく、大人にも向けて。読み聞かせをしていると、「僕はこの色〜!」って子どもが楽しそうに言うことがあって、それを見て大人も納得していた。“絵本は子どものもの”っていう意識を外して、みんなが読んで欲しい。そして、そこから会話が生まれたら嬉しいです。