− 絵本『LITTLE HEARTBEAT』をつくろうと思ったきっかけを教えてください。
Chara:私の生誕50周年に加えて、父が亡くなったこともきっかけのひとつ。父は鋳物製造業を営んでいて、作家さんの作品づくりにも携わっていました。父が亡くなり、岡山に住む妹と会うことが多かったこともあって「何か一緒につくりたいね」という話になり。「絵本つくらない?」「来年つくろう」「いいね!」「私がお話つくるから、みっちゃん(妹の光子さん)絵を描いて」って話をしていたら、BEAMSから出版のお話をいただいて。タイミングも良かったんです。
妹とは小さい頃からすごく仲が良くて。音楽が好きで絵本も好きで、姉妹で共通点が多くて。彼女は、大学で絵の勉強をして、木版画を学びました。2人のもうひとつの共通点に子育てがあり、私はだいぶ子どもが大きくなったけど、彼女の子どもふたりはまだ小学生。おばちゃんとして、可愛い姪っ子に毎年クリスマスに本を贈っています。ずっとクリスマスにちなんだ絵本を贈っていましたが、最近は私が好きな本や「本人が欲しがってるから」とおしゃれなものを贈ったり。絵本はずっと好きで、大人になった今も、グッときたものがあれば買いますね。
− 絵本と曲づくりでは、違いはありましたか?
Chara:ふだん詞を書くときは一筆書きで、ノリで書くんです。歌うように話す、話すように歌いたいから。これまでインスパイアされてきた自然や人との会話、おいしかったもの、美しいもの。日々ほおばって溜めていたものが、出ていくようなイメージですが、絵本も同じように歌うようにリズムにのせて書きました。だから文章のリズムも、ミュージシャンらしい間のとり方や言葉のリズムかもしれない。詞には、句読点がないですからね。
曲をつくるときは、ムービーのように絵が動くイメージがあるんだけど、絵本も同じでした。だけど妹に「この絵を描いて」みたいなことは言わず、姉妹ならではの分かりあうもの、通じ合うものに任せました。彼女の絵は、宗教画とかバロックっぽいイメージだけど、私のつくる音もクラシックとかオルガンっぽい曲があって、バロックっぽい要素が少しある。“祈り”みたいなものですね。
素敵な恋をしてほしい。そして「自分の恋も頑張れ!」
− 物語は、女の子が1人の男の子に出会うまでの話。ストーリーには、どんなメッセージが込められていますか?
Chara:姪っ子たちに素敵な恋をしてほしいという想いだったんだけど、出来上がったものを読み返してみると、「自分の恋愛も頑張れ!」って思ったの(笑)。私、シングルマザーでしょ? 私のようなお母さんもたくさんいると思うので、娘や息子のことばかり考えているけど、私はどうなの?と思って。やっぱり曲づくりと同じように、自分に向けているなとも思った。自分の中にないものはリアリティがないし、人にも伝わりにくい。
まわりにも仕事をしている女の友達がたくさんいて、「もう恋はいいかな」って言ってるけど、この本を見たら恋したくならない?って思う(笑)。一筆書きで書いたけど、感慨深いものがあるなと思って読み返してる。
− 絵本=子どもの楽しみだけではない、豊かさや広がり、アートとしての美しさも感じます。中盤に出てくる、手紙の仕掛けも素敵でしたね。
Chara:小さい子の読み聞かせにはちょっと難しい本だから、お母さんのアレンジで楽しんでもいいかも。例えば、手紙の仕掛けのところに、「今日、ママのメッセージ入れておいたよ」とか。手紙をきっかけに、「今日一緒にお手紙書いてみる?」とか「ラブレター書かない?」とか、インスパイアされて何かやってみるのもいい。(絵本に出てくる)ライラックの花に興味を持ったら、「ラッキーライラック」「じゃあ、四つ葉のクローバーを探しに行く?」とか。いろいろな楽しみ方をして欲しいです。
− ちなみに、お子さんたちは『LITTLE HEARTBEAT』を読みましたか?
Chara:家に置いておいたら、息子が読んでくれました。「これは英語でもやった方がいいんじゃない?」ってアドバイスをくれて。彼は辛口でうるさいんだけど、褒めてくれたから、珍しい!と思って(笑)。
絵本は、音楽の楽しみ方と似ている。名作、作家でたどって読んでも
− お子さんたちが小さい頃は、どんな絵本が好きでしたか?
Chara:2人それぞれ全然好きなのが違うんだけど、共通して好きなのは、“おいしい”系の絵本かな。『おひさまパン』っていう絵本があって、レシピのつくり方も載ってて、冬にいいかも。実際に、これつくろう!ってやってみたら、あまりおいしくなかったんだけど(笑)、失敗しちゃったかもしれない。小さい子には、『もこもこもこ』はおすすめ。最初にリズムでハマって、絵もすごくって。何度も読み返しているうちに、ぼろぼろになって2冊目を買いました。親が一緒に、「つん」とか「ぷうっ」とか動きをつけても楽しい。最初に絵本を贈る時は、『もこもこもこ』をプレゼントするようにしています。
『お月さまってどんなあじ?』も好きだったし、名作だけど『しろくまちゃんのほっとけーき』もいいよね。『しろくまちゃん〜』は、娘が落書きしてましたから(笑)。SUMIREちゃんのは、こんなパンケーキにしちゃおう!って(笑)。男の子だと『かたあしだちょうのエルフ』もかっこいい。絵本は音楽と同じ楽しみ方ができますよね。読み継がれる名作をたどってもいいし、作家さんからたどって読むのもいい。
あ! 今ひらめいたんだけど、絵本ソムリエとか絵本まわりの免許を取りたい! まだまだ勉強不足だけど60歳くらいまでに取って、いろんな絵本の紹介とかできたらいいな。
− 50歳を迎えても輝きを放ち続けるCharaさん。魅力的な秘密を教えてください。
Chara:私は、ミュージシャンでゼロから曲をクリエイトして生きてます。アーティストには、アーティストと自分そのものを分ける人と分けない人がいて、私は分けない方。分けるのがストレスになるから、ずっとCharaなんです。常に音楽と生きているし、いい意味で適当だし、一生懸命できないところもある(笑)。いや、何でも一生懸命やるんですけど、いい意味で適当なところをつくる勇気がある。いいものはいいと早く言える強さかな。1日を有意義に過ごしたいから、ジャッジが早いんですよね。早く帰って、犬とモフモフしたいの(笑)。若い時は、いろいろ悩んだけれど、今はショートカットでいけるようになった。私が決める役割が来たってことは、ショートカットでいいんだね、はい!はい!って。それが私のやり方。Chara的なエッセンスを取り入れるんだったら、自分を信じる力を持つこと。
あと、あまり強がりすぎないっていうのも大事。「私ダメかも…」くらいの女性的なものをキープしないと、ムキムキ女になっていっちゃうから。心ムキムキ女にね。この年だからこそ、それを心がけてます(笑)。
親は子の鏡。子どもには、なるべく美しい言葉で接してあげたい
− 子育てをしているお母さんにメッセージをお願いします。
Chara:子どもたちには、なるべく美しい言葉で接してあげたいですよね。親は子の鏡でもあるから、私自身も気をつけてましたね。仕事をしていたので、時々シッターさんにお願いするんだけど、その方が本当に美しい言葉を喋る方で。YUKIちゃんちにも行っていたシッターさんなんだけど、普段のおしゃべりもそうだし、地域の方と交流する時もとても美しい言葉で話すんです。ミュージシャンだとイエ〜!って感じもあるけど、彼女の影響で女性らしさや言葉遣いには、とても気をつけるようになりました。
お母さんとかお姑さんのいいところは、どんどん聞いて取り入れたりするのも大切。ただ、時代が違うことを理解してもらってからだけど。昔と違って、変わってきていることもたくさんあるから。そこがうまく行けば、ストレスも無くなるだろうなと思います。
− 子育てしていると孤独を感じたり、不安に感じることも多いですからね。
Chara:情報がたくさんありすぎるのもあるけど、自分で旗をきちんと立てて、信じる強さも大切。不安を感じていると、子どもにも伝わるからね。ママ友だって、たくさんはいらないし、1人でもいいと思うから。安心してって言いたい。
著者:綿引美和 + 綿引光子
デザイン:吉田ナオヤ(HIBA)
編集:藤木洋介(B GALLERY)
発行:株式会社ビームス
価格:¥5,000(税別)
Information
エキジビション「Chara Art Forest 『LITTLE HEARTBEAT』」をBギャラリーにて開催中!
『LITTLE HEARTBEAT』刊行を記念した展覧会を新宿のビームス ジャパンで開催中。作中に出てくる絵やCharaさん姉妹の幼少期の写真などが展示され、絵本の世界観と二人の感性が詰まったインスタレーションとなっている。
「Chara Art Forest 『LITTLE HEARTBEAT』」
開催期間:2018年12月8日(土)~ 2019年1月14日(祝・月)11:00~20:00 ※1月1日(祝・火)休
開催場所:Bギャラリー(ビームス ジャパン/東京都新宿区新宿3-32-6 B1F – 5F)
初回限定盤は2018年7月Blue Note Tokyoで行われた『Shut Up And Kiss Me! 〜Sweet Soul Sessions Supreme〜』のライブ音源を収録した2枚組。「Baby Bump」2018年12月19日発売
初回限定盤 (2CD)¥4,000、通常版(CD)¥3,000