
子どもが受けるルッキズムの影響とは
ルッキズムとは、見た目によって人を評価したり、差別すること。日本語では「外見至上主義」とも呼ばれています。見た目のよし悪しによって相手を評価し、社会的な扱いや機会に差が生じたり、不利益を被ることが問題視されています。「ルッキズム」という言葉は1970年代のアメリカで、肥満を理由とした差別に対抗する「ファット・アクセプタンス運動」のなかで使われ始め、次第に広まっていきました。

日本におけるルッキズムの認識も徐々に高まっていて、2022年には「ルッキズム」という言葉が新語・流行語大賞にノミネートされるなど、社会的な注目が集まりました。しかし、ルッキズムに対する理解や対策が十分とは言いがたい。大人だけではなく、子どももルッキズムの影響を受けやすいとされています。外見に関する価値観は幼少期から形成され、成長過程で自分の外見を意識するようになるためです。ルッキズムの悪影響は、自己肯定感の低下や意欲の低下などにつながりかねず、また、子ども時代の経験が大人になってからも自己イメージや他人への接し方に反映される場合も。少しでも、外見に関する偏見をなくしていくためにどうしたらいいか、長田杏奈さんに伺います。
Q.子どもが他人の容姿をからかう発言したら?
「街で歩いている人の容姿について、『お腹が大きい』『顔にブツブツがあったね』『目が寄ってたね』などの発言をすることがあります。そういうとき、どのように返答すればいいのでしょうか。本人は悪気がなさそうですが、子どものホクロを指して『ここにホクロがあるでしょ? それと同じでいろんな人がいるんだよ〜』などと今は返答しています」(5歳女の子、0歳男の子のママ)
「息子が『〇〇くんのママはこーんなに大きい!』と話すことがありました。容姿について意見することはよくないと思いつつ、息子は太っている・痩せているの概念をまだ理解しておらず、悪気なく話していたのでリアクションに困ってしまいました。どんな体型でも素敵だと伝えたいのですが、どのような声かけをするのがよいかアドバイスが欲しいです」(4歳男の子のママ)

A.「みだりに他人の容姿のことは言わない」と約束する
これはルールとして、他人の容姿について軽々しく口にするのはダメだときちんと教えましょう。悪気がなくても、です。見た目が気になることは悪いことではないけど、「声に出さなくていいんだよ。傷ついちゃう人がいるからね」と伝える。
また、褒めるときも注意が必要です。たとえば海外では「背が高いね」、「顔が小さいね」と言ってもけなされたと感じ、褒め言葉と受け取ってもらえない場合もあります。また、たとえ同じ文化の中で暮らしていても、その人にとってはコンプレックスだったり、見た目のことばかり言われることにうんざりしたり傷ついたりしている場合も少なくありません。

では、相手を褒めたいときどうするか。ひとつの目安になるのが、その人が選んだものや変えられるものを褒めること。「いいニットだね」とか「その髪型似合ってるね!」とか。ただ、細かい話をすればそれもやっぱり相手との関係性や場面による部分があって……。子ども時代なら角が立つ場面は少なそうですが、たとえば大人にも「そのリップの色いいね」「おしゃれな靴だね」と言われたら嬉しい場合と戸惑ったり居心地悪く感じる場合があると思うんです。誰かを褒めたくなる気持ち自体は素敵なことなので、正解を決めずに相手がどう受け止めるか想像を働かせながら経験値を積めるといいのかな。

「ルッキズム」を考えるうえで、外見だけでなく内面や才能など、人それぞれに違う価値があること、人の魅力はさまざまだということを伝えることが重要だと思います。世界の絵本や子ども用教材を読み比べたとき、日本は登場人物の体型や肌の色などの見た目にあまり多様性がないなと気になりました。なので、多種多様な人種や年齢の人が出てくる本や映画を観るようにしたり、旅行に出かけたり、異文化に触れるイベントに参加するなど、さまざまな価値観に触れることで、人の魅力はさまざまあるんだと気づくきっかけになるかもしれません。
子どもも成長過程で容姿に対する考え方はどんどん変わっていくと思いますが、容姿のことで深く悩んでいたら、どうしてそう思うのか話を聞いたうえで、悩みを和らげたり、不必要に傷つくことがないようにどう考えたらいいかを親子で話せるといいですね。