2011年に公開された人気アニメーション映画『長ぐつをはいたネコ』、前作から12年の時を経て、新作の続編『長ぐつをはいたネコと9つの命』が公開されます。“A cat has nine lives”——「猫は9つの命を持つ」というヨーロッパで言い伝えられることわざをモチーフにしたストーリーは、主人公のプスが最後のひとつになった命と共に進む冒険物語です。
作品から新しいパートナーシップ、
家族のあり方に共感
——キティ役のオファーがきた時の感想を教えてください。
「先に英語版を観させてもらったのですが、キティ役を担当したサルマ・ハエックさんの声を聞いた時に、私とすごく似ている! と思って。しかも、キティはちょっと悪役っぽい雰囲気もあり、美しくてキュート。ぜひやりたいと思いました。私はアニメーションが大好きで、これまでたくさんの作品を見てきました。その中に、キャラクターとして入らせてもらえるのがとても楽しみでした」
——『長ぐつをはいたネコ』は、物語の面白さはもちろん、ネコそのものの愛らしさが描かれているところも魅力のひとつです。
「そうなんです。一般的な猫の魅力と言われるようなやわらかい肉球とか、まん丸い瞳孔とか、その辺りはもちろんですが、ネコらしいしれっとした性格、喧嘩する前の逆立つ様子とか。ネコの本質的な部分が淡々と描かれているのも魅力なんですよね。ミルクを飲むときも舌でぺろぺろ飲んだり(笑)。片や、吹き替えは山本耕史さんが演じていて、愛らしいネコというより渋くてかっこいい雰囲気。ネコのイメージを覆す演出も気に入っています」
——キティは、前作ではプスの恋人のような存在でしたが、今回は“元カノ”として登場します。関係の変化をどのように受け止めて吹き替えましたか。
「プスとキティ、かつては恋心があったとはいえパートナーシップとしての男女関係はあると思うので、性別を超えたつながりが今の時代にぴったりだと思いました。例えば、私が男性と戦いに行ったとして、普通は男性が先に戦いに行くのかもしれないけど“私が先に行きます!”みたいな。男女対等な関係ですね。キティのプスに対する母性や助けてあげたいというやさしさにも共感します。そういう意味では、私とキティはすごく似ていてやりやすかったです。一方で、ちょっと人を騙しちゃうような可愛げのある表情は、私が持ち合わせない部分だったりするので(笑)、可愛い子ぶるような声を出すのは、ちょっと難しかったですね」
——今回の物語は、スケール感のあるストーリーや豪華なアクションが見どころでもあります。アンナさんのお気に入りのシーン、好きな場面などはありますか。
「キティがプスに騙されたと思って、“あなたは自分のことしかやらないのね”と言うシーンですね。キティは淡々として怒ってはいないけど、すごく悲しくて深く傷ついている。あのシーンで、キティが崩れ落ちるでもなく、“私は私でやるからいいけど、あんたは私を傷つけたのよ”ときっちり説明して去っていく姿にはグッときちゃいます」
——ヒロイン像としても新しく、かっこいいですよね。アンナさんの話を聞いていると、子ども向けのアニメーションに留まらず、大人が感じる部分が多い作品にも思いました。
「見方によっては、ものすごくメッセージ性が強いと思います。例えば、願い事って、みんなそれぞれあると思うけれど、気づいたら実は叶っている、というのも印象的ですよね。3匹のクマと一緒にいるゴルディがそう。家族が欲しいと思っていても、愛を確かめ合えるなら、血のつながりや形はどんなものでもいい。今の世の中、いろいろなシチュエーションの家族がいると思うから人と比べちゃいけないんですよね」
——視点を変えてみると、気づきの多さに驚きますね。
私の役目は子どもの命を守ることだけ
子どもの人生は子ども自身のもの
——アンナさんは18歳から下は4歳の、4人のお子さんを育てられていますが、子育てで大切にしていることは何でしょう。普段、子育てで悩むことはありますか。
「悩まないですね。4人それぞれ得意不得意が違うし、私とも違いますし。それぞれに合った道に進めばいいと思います。もちろん大まかなレールは引いてあげる必要はあると思いますが、そこから誰と出会うか、何に目覚めていくかは誰も分からない。それなのに親がレールを引いてしまうと、完全に私の人生になってしまいます。不得意なことを無理にやらせても苦しい人生になるだけ。私が母親として唯一やることは、子どもたちの命を守るだけです。それだけはちゃんとしていますが、基本自由にやっています。母親でいるというより、きょうだいのひとりとして同じ屋根の下で暮らしているという感じですね」
——子どもが10代になると思春期を迎え、反抗期になるお子さんもいます。そんな時期はどう対処しましたか。
「そういう時期はあまりなかったのですが、たまに話をしているときに、完全に心がここにない目になっていることはありましたね。そのときは、すかさず“今反抗期来てるよ!” “私のこと、うざいと思ってるでしょ?”と先に言っちゃいますね。そのおかげか、わかりやすい反抗期や無視もなくてハグもしています。もちろん、思春期の男子特有の匂い問題があるときは、『臭いから洗って』とかはあります(笑)。ざっくばらんにやっていますね」
——ちなみに家でこれだけは守っているというルール、土屋家の家訓はありますか。
「”嘘をつかない”ということは伝えていますね。誰でも経験するものではあるし、大人も嘘をついてしまうことがあるので絶対ではないのですが、”人を傷つける嘘は、全部自分に返ってくる”と教えています。1回目の嘘、2回目の嘘、嘘をつくとつき続けなくてはいけない。苦しいのは自分ですが、それまでにどれだけの人を傷つけてきたのかを考えなさい、と。
現実的なもので言えば、部屋に閉じこもらない。ちょっとでも部屋に閉じこもりそうになったら、みんなで映画を観たり、“何やってるの〜?”“おいで〜!”と声をかけますね。成長とともにひとりの時間も大事になってくるんだけど、私がいなくなったあと、残るのはきょうだいだけだから、そこの絆は強くして欲しい。年齢が離れているからこそ、いっぱい喧嘩をして、いっぱい話して、お互いを守り合って欲しい。だから私との会話よりも、きょうだいで一緒に遊びなさい、と伝えています」
——きょうだいの仲がよければよき相談相手にもなるし、頼れる存在になりますよね。
「あとは困っている人は助ける、弱いものいじめはしない。例えば、飛行機でバッグを取ろうとしている年配の人がいたら手伝うとか。気づいたら、すぐ行動に移すようにと言っています。私はついやり過ぎちゃうタイプだから、逆に気をつけてと注意されちゃうんですけど(笑)。見てみぬふりって、いちばん怖いじゃないですか。それだけはできる子になって欲しいですね」
——最後に、最近力を入れている環境保護活動について聞かせてください。
「はい、保護活動は以前から続けていますが、最近とくに力を入れているのは“知ること”ですね。珊瑚の生態について、読んだり、話を聞いたりしています。実際に宮古島に足を運んで、環境保護活動をしている人からも話を聞きました。地球は人間のためのものと思ってしまいがちですが、ほかの生き物が住む場所でもあります。ほかの生き物の生態を知ると、ゴミを捨てることがどれだけ悪いことか分かる。知ると、ゴミを捨てないようにしようと思うし、分別しようと思う。
そしてそれを私が伝える。すると周りの人も気づき、行動を起こすことができます。例えば、ゴミを拾うことも、ひとりでやるとひとつしか拾えないけど、みんなで拾えば同時にたくさん拾える。24時間テレビでそれができたらおもしろいなとか。そんなことを考えながら、知識を増やしています。知識を持つことが行動のもとになると思っています」
——家族には、環境保護活動についてどんなことを話していますか。
「いちばんは、食べ物を残さないことです。魚1匹、そこには魚の命があって、それが私たちのお薬にもなる。だからちゃんときれいに食べようねと伝えます。大きなことをやろうと思っても続かないから、まずはそこからです。子どもたちは、それを楽しんでやってくれるんですよね。今見ている青い海が、子どもたちの世代では見られなくなるかもしれない。そのためには、私たちも行動を起こさないといけないと伝えています。
今戦争もしているから、いろいろな矛盾があるんです。戦闘で落とした爆弾が海に行く、そうすることで海の生き物が死ぬ。そう考えると、戦争がいかによくないことか分かりますよね。地球に住むひとりとして、ともに生きる動物たちの生命を考えることは大事だと思います」
『長ぐつをはいたネコと9つの命』
監督:ジョエル・クロフォード
本国声の出演:アントニオ・バンデラス サルマ・ハエック
日本語吹替版キャスト:山本耕史、土屋アンナ、中川翔子、小関裕太、木村昴、津田健次郎
2023年3月17日(金)TOHOシネマズ日比谷他全国ロードショー
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