ガーフィールドを演じて、子どもという存在が
親にとって何よりも大事だということを実感
―映画『ねこのガーフィールド』の吹き替えのオファーが来たときの心境を教えてください。
山里:とにかく、驚きました! プレッシャーを感じること自体おこがましいくらいで、まずは“僕がやってもいいのかな”と思ったんです。
MEGUMI:それなら、断るという方法もあったのでは……?(笑)
山里:いやぁ、それは、ほら……! とりあえずやってみて、映画側が「やっぱりダメだったね」と断ってくれたらいいんじゃないかなと(笑)。そしたらあちら側に選んだ責任が発生するから、僕だけが全部悪いということにならないし!
MEGUMI:あはは!
山里:それにしても、MEGUMIさんの演じるジンクスはよかったね。
MEGUMI:ありがとうございます。ジンクスはヴィラン的な要素もあるんですが、過去を紐解くと、どうして今のようになったのかということが描かれているんです。なので、そこは大事にしつつ、演じていきました。さらに感情表現が激しい方が、チャーミングに映るのではないかなと思い、意識して役づくりをしていったんです。山ちゃんのガーフィールドもすごく似合っていましたよ。
山里:嬉しいなぁ。ガーフィールドのずる賢さと、不器用さが同居している性格が、すごく生き物らしいなって思ったんですよね。
MEGUMI:ガーフィールドはすごく可愛いですよね。ジンクスも、後先考えずに直感で動くタイプなんです。「復讐してやる!」って言っているんだけど、やっていることはミルクをあげないとか、可愛いところもあるんですよね。
―今作はガーフィールドと父親の絆も深く描かれていますが、共感するところも多かったのではないでしょうか。
山里:そうですね。ガーフィールドの父親は、つねにガーフィールドへ目線が向いているからこそ、どんな瞬間も見えているんです。それがたとえ一瞬であっても、記憶にしっかりと残っていて、子どもに対してサッと手を差し伸べたり、子どものためになるのなら、パッと自分を切り捨てることもできるんですよ。僕の娘はまだ2歳なんですが、次第に僕もその感覚を覚えていくのかなと思いました。
MEGUMI:娘さんは2歳になったんですね。
山里:うん。ガーフィールドほどの無茶はしないけど、いきなり走り出したりするから目は離せないし、この父親のように何があっても圧倒的に子どもが最優先というところはわかる気がします。
MEGUMI:私の息子は15歳になるんですが、今でも息子のことに対して一喜一憂してしまうんですよね。さらに今は海外に留学をしているので、離れているがゆえに全部が心配ですし、好きという気持ちが増幅してしまっていて。いいことがあったら泣いて喜ぶし、自分のこと以外にこんなにも感情が揺さぶられるのはやっぱり子どもしかいないという、世界共通にある親子の観念をあらためて身に沁みて感じました。それにガーフィールドは、息子が小さいときに、カートゥーンネットワークで365日毎朝見ていたんですよ。それもあって、ガーフィールドを見た瞬間に、育児中の風景が脳裏に浮かんで泣いてしまったんです。それくらい私の中に刻まれている作品なんですよね。当時は子育てに本当に必死で大変だったけど、今思うとすごく幸せな日々を送っていたんだなと感慨深くなりました。それに、ガーフィールドの父親を通して、親っていうのは、子どもに何があっても、どうなったとしても、いちばん大事な存在なんだなということをあらためて自覚しました。
―そこまで思い入れが強い作品の声優を務めるとなると、大きな運命を感じたのではないでしょうか。
MEGUMI:すごく嬉しかったですね。ガーフィールドの声を聞くと、子どもがテレビを見ている横で自分が朝ごはんをつくっている姿が鮮明に蘇るんです。この作品に参加させていただけるのは、本当に“エモいな”と思いました。
―アフレコのときに大変だったことを教えてください。
MEGUMI:山ちゃん、すごい上手だったよ!
山里:本当!? ガーフィールドって、やたらめったら叫ぶんですよ。なので、叫ぶシーンは最後に取っておきましょうということになり、そのほかのシーンを先に録ってからにしたんです。なので、最後はいろんなバリエーションで叫びました。MEGUMIさんは、歌うシーンもあるんですよね!
MEGUMI:フランス語の歌だったので本当に難しかったですね。なじみがある言語ではないから、イントネーションが大変なんですよ。やったことのない口の形をしたりしていて。さらにアフレコの時間がかなりタイトだったので、叫んだあとにフラフラしながら歌ったりして、かなりの挑戦になりました。
―おふたりで一緒にアフレコはしたんですか?
山里:それはなかったですね。
MEGUMI:別々だったんですが、山ちゃんが先に録音されていたので、それを聞きながら録っていきました。もともと『スッキリ』で“天の声”をされていたときも、突き抜けるような明るさがあってすごくいいなって思っていたので、今回もとてもいい声だなと思っていました。
育児に悩んだ時間も、振り返ると
愛おしい時間だったと思えるんです
―家族の中でパパが子どもにどんな関わり方をすることで、家庭が上手くいくと思いますか?
山里:まだ娘が小さいので、ハッキリとはわかっていませんが、パパって表現がすごく不器用で下手な人が多いから、そこに距離を感じてしまう人も多いと思うんです。でも、子どもから見たら、実はあまり距離感はないんじゃないかなと思っていて。これは育児をするなかで気づいたのではなくガーフィールドを見て思ったんですけどね(笑)。
MEGUMI:今そこに気づくなんてすごいと思いますよ。山ちゃんの娘さんも、いずれ離れてしまうからこそ、しっかりと関係を築いていってほしいですね。
山里:やっぱり離れちゃうんだよねぇ……。
MEGUMI:すっごく寂しいから!
山里:嫌だなぁ~! 今は娘に何かを頼まれたら、絶対に何でもしちゃうんですよ。今のところ僕は娘に対して“NO”がひとつもないんです。この前も、娘が持っていた絵本の角が僕にあたって、めちゃくちゃ痛かったんですけど、「ごめんね」って言われたら、一瞬で痛みが消えたんですよ! でも、だからといって僕のボディが無敵だとは思わないで欲しいですね。本当はちゃんと「ダメだよ」って言いたいんですけど、まったく言えないので(笑)、すべてがごめんねで許される世界ではないということをいずれ教えたいと思っています。本当にその「ごめんね」が可愛いすぎるんですよ!
MEGUMI:可愛いよね~。それは仕方ないですよ(笑)。私も、息子にいいと思い込んで、たくさんの情報を手に入れて、絶対にこれがいいはずと信じて、たくさんのレールを引きまくってしまった時期があったんです。本人はそれに対して煩わしさを感じていて、すれ違ってしまっていたんですよね。でも、今は物理的に距離が離れて、“この人はこの人の人生があるから言いたいことがあっても100のうち1くらいにしておこう”と思えるようになったんです。でもいつか、あのすれ違っていた時期のことを思い出したときに、ママは決して押し付けていたのではなく、一生懸命だったと理解してもらえたらいいなと思っています。難しいと思いますけどね(苦笑)。
―子育ては試行錯誤の繰り返しだと思うのですが、どうしてもほかの子と比べてしまうことも多いですよね。
MEGUMI:そうですね。産んだらすぐに母乳か粉ミルクかで悩みますし、オムツが取れるのが遅くて本当に悩んでいたんですが、今となって考えると、“本当にどうでもいいな”って思うんです(笑)。だって、大人になって「僕、オムツが取れるのが遅かったんで、すいません」っていう人いないじゃないですか。
山里:あはは! 確かに!
MEGUMI:ミルクだろうが、母乳だろうが、喋るのが遅かろうが早かろうが、後々帳尻が合うのは今となればわかることだから、まったく気にしなくていいと伝えたいですね。
山里:ものすごく心強い言葉ですね。でも、本当にその通りだと思う!
MEGUMI:いろんな壁が立ちはだかりますが、そうやって悩む時間も愛おしい時間だったなって思うんです。
山里:できないことに悩んで、それを子どもにぶつけなければいいんだよね。それに、箱の上に積み木を置くなんて、いつかはできることだしね。とはいえ僕も、近所に住んでいる1ヵ月しか月齢の変わらない男の子が、磁石のついた魚釣りのオモチャを使いこなしていたことがあったんです。娘はその横で、そのオモチャを食べていて、「これは負けているな」って思っちゃったんですよね。帰ってから娘と練習をして、オモチャの魚が釣れたときはすごく嬉しかったので、負けてダメだと思うだけではなく、できる子を見たらそれを目標にしてチャレンジに変えると、すごくいい課題が増えると思えたんです。
―それは子どもだけではなく、大人にも言えることですね。
MEGUMI:本当ですね。素敵!
いつか必ずくる育児のエンディングを
意識すると味わい深い日々が送れるはず
―MEGUMIさんは子育て中、ハッピーでいるためにどんなことをしていましたか?
MEGUMI:子育てをしていると、どうしても“ちゃんとしなくちゃいけない”と思ってしまうんです。でもお母さんだって、最初から完璧な人は誰もいないんですよね。もし戸惑ったり、わからないことがあったのなら、その素直な気持ちをパパでもママ友でもいいから言える環境をつくることが大事だと思うんです。実は私も、ちゃんとしようと思いすぎて体調が悪くなってしまったことがあったんですよね。それからは、たまに友だちとランチに行ったり、お出かけをすることで息抜きをするようになりました。いい子育てをするためには、息抜きは絶対に必要だと思うんです。
―ものすごく大事なことですよね。そこで抱く罪悪感はなるべくなくしていきたいですよね。
MEGUMI:そうですね。その罪悪感って、ちゃんと子育てをしているからこそ感じるんです。それに、自分で自分を守ってあげないと潰されちゃうし、まわりと比較しすぎるとどんどん悪い方向に考えてしまうから、自分の子育てを認めてあげることが大事だと思います。
山里:今MEGUMIさんのお話を聞いて、そういう時間をつくってあげようと思いました!
MEGUMI:絶対にそうしてあげてください!
山里:奥さんはもともとアイドルオタク気質なので、今は娘の“ガチオタ”なんですよ。なので、すごく楽しそうに育児をしていますが、たまに大好きな宝塚を観に行ったりして、リフレッシュもしているんです。とはいえ、行っている最中に罪悪感があったらよくないので、そう思わせないようにしなくちゃなって思いました。もう遅いかな?
MEGUMI:いやいや、全然! ぜひ実行に移してあげてくださいね。
山里:承知しました! それに僕にとっては、読者のみなさんが先輩であり先生だと思うので、本当にいろいろ教えてもらいたいくらいです。もし僕が正しくないことをしていたら叱責してください! 受け止める準備はできています!
MEGUMI:私の息子は15歳でもう子育てがひと段落してしまったんですが、その立場から言わせていただくのであれば、必ず育児のエンディングは来てしまうんです。子育て中って、「終わらないんじゃないか」「いつまでやるの」って錯覚してしまうんですが、終わりが来ることを認識すると、もっと味わい深く育児ができると思うので、ひとつひとつの成長を楽しんでいただけたらと思います。
―では最後に、映画を観る親子にメッセージをお願いします。
山里:この映画は、自分をどのキャラクターに反映させるかで楽しみ方が変わってくると思います。親の目線、敵の目線など、観るたびに視点を変えたら、何度でも楽しめるんですよね。さらに、劇中のアクションがすごくおもしろいんです。子ども向けかと思いきや、伏線を回収するタイプの作品でもあるので、じっくりと楽しんでもらいたいですね。
MEGUMI:私も子どもとずっと一緒に見ていたのって、親としても楽しめる作品だったからだと思うんです。お子さんはジェットコースターのように流れる物語の展開を楽しめると思いますし、親はちょっと泣けちゃうくらいのストーリーになっているので、親子で満たされるお話になっていると思います。ぜひ夏の思い出に見ていただけたらなと思います!
食べることが大好きな怠け者の家ねこガーフィールドは、飼い主のジョンに愛されて幸せな毎日を過ごしていたが、生き別れた父親ねこのヴィックが現れたことから平穏な日常が一変。ずる賢いボスねこ・ジンクスに追われているヴィックに助けを求められて家を飛び出し、大冒険を繰り広げていく。日本語吹替版ではガーフィールドを山里亮太さんが演じ、ジンクスをMEGUMIさんが演じる。
8月16日(金)より全国の映画館で公開
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント