月刊コラム、64回目。
「ベイキングは数学、サイエンス、社会貢献」の話。
こんにちは。
イギリスは3月だというのに急に雪が降った日があったりして、安定の、不安定な天気、つまり通常運転です。
英国人は焦った時や何かハプニングが起こった時は、とりあえず紅茶を飲んで心を落ち着かせる……もしくは紅茶を飲むかと聞く……というのは以前にも書いた、私の好きなイギリスの慣習なのですが。
また別で、文化を感じた事のひとつに「Baking (ベイキング)」があります。多くの人が日常的にオーブンを活用し、料理や焼き物をつくる。最初のロックダウンの時などは、スーパーから真っ先に小麦が消えて、家で多くの人がベイキングをしているからだというニュースを知り、驚きました。ベイキングの国、イギリス。
娘の学校でも、Funding (学校の教材や設備を整えるための予算を集める活動) の一部として2週間に一度、放課後にケーキセールというのが行われています。それぞれの家庭で焼いたカップケーキやビクトリアンスポンジケーキ、マフィンやクッキーなどのお菓子を持ち寄って、それを £1 や 50P で販売するというものです。すべてボランティアで行われます。
最近ロンドンでは、政府に対して制度や待遇の改善を求めるストライキが様々な業種で行われています。列車やバス、郵便や病院などが数日間休みになる事は頻繁にあり、ついに学校の先生たちによるストライキが、先月から4回ほど行われています。
賛同する先生のクラスは休校になるので、親はその日の仕事を休むか、チャイルドケアをセッティングしなければなりません。そのような状況も踏まえて、学校での資金集めは、ワークショップやベイクセール、ブックセールなど様々なスタイルでより頻繁に行われるようになってきています。
教育のため不足している予算を、各家庭が補填するというのがそもそもおかしな事だと思うので、そのような動きが政府に届くといいなと願いつつ、今はできることをするのみ! ということで、話が戻るのですが、本気でファンディングにも協力しようという事で、ついにボウル固定式のミキサーを購入しました!
材料を手早く混ぜてくれるマシンです。これによって、卵白をメレンゲ状にすることや、クッキードウを楽に大量につくれるようになって、忙しくても空いた時間できっちり焼き物ができるようになりました。筋肉痛なしで。
……革命!
もっと早く買えばよかった。
お菓子のほかにも、ハンバーグなどもおいしくできるそうです。
せっかく買ったので、色々研究しているうちに、ベイキングにはまってしまい、最近はベイクセールがない時も、色々と焼いています。先日は、抹茶シフォンケーキをつくりました。6歳児でもできる工程が多いので、一緒にやると楽しい。
焼けました。
シフォンケーキ、久々……
イギリスのスーパーは、植物性ミルクの選択肢が多いのですが、その中でもファンの多いオーツミルクの生クリームが出ていました。植物性のクリームはさっぱりしてておいしいですね。
盛り付け。
シフォンケーキは軽いので、ぽいぽいいけますね。
他にも、抹茶やチーズのクッキーを焼いてみたり↓
日系菓子店にいかねば食べられない抹茶ショートケーキを自作してみたり↓
苺のロールケーキをつくってみたり↓
カステラを焼いてみたり↓
福砂屋などのおいしい新鮮なカステラは手土産でもらえない限りは、こちらでは入手困難の夢のお菓子……ただ、途中、レシピにある大量の砂糖に引いてしまい、勝手に減らしたりシロップを代用してしまったため、似たようなものに仕上がりました……うむ、日本で食べようか。
そんな風に、ベイキングする人も多いので、専用のお店などもあり、製菓ツールがもちろん色々揃っていて、やり始めてみると、とても買い物が楽しい。
先週末、たまたま遊びにいった先に製菓材料店があって、立ち寄ったところ娘が手に取り購入したのはこれ。
Flowerpot Maffin Case とかいてあり、鉢型のシリコンカップのようです。チョコマフィンをつくったら面白いんじゃないか?と早速。
材料。
イギリスのスーパーには、いくつかの小麦粉があり、Plan Flourと言っても日本のとはグルテン量の違いもあったりして結構「別の粉」という印象で。それによって独特の食感、例えばスコーンなどがサクッとほろっとした焼き上がりになったりします。
この日は普通の Plan Flour に、たまたま残って使い切りたかった Self-rising Flour を混ぜて使いました。この Self-rising Flour というのは、ケーキやスコーンなどをささっとつくるために販売されている小麦粉で、予め5%程度のベイキングパウダーが混ざっている粉です(クッキーをつくると、ほわっとしてあまり好みではありませんでした)。
なので、その含有分を算出してベイキングパウダーを減らし、小麦も計量し……という事で冒頭の「ベイキングは数学……」に戻るのです。はるか昔に受けた学校教育に感謝……大人になってからも数学はピンチを救ってくれるよ! まぁ、最初からこんなややこしい事をしなければ要らない手間ではあるが……
マフィン生地を入れると、このような。小石っぽくチョコチップを追加してみた。
焼き上がった↓うむ、土っぽいぞ。
クリーム、クリーム……(鼻歌で)
そうだ、スーパーには生クリームも何種類もあるのです。
Single Cream、Double Cream、Extra Double Cream、Soured Cream、Whipping Cream、British Cream Fraiche、Clotted Cream… などなど、焼き用途によってクリームを選ぶそうです。すごい、よく知らない、まだまだ奥深い! わくわく。
抹茶クリームを盛ったら、さぼてんみたいになった(笑)。
かわいい……
卵黄や卵白を使うと、その混ぜ具合や順番で焼き上がりがめちゃめちゃ変わってくるし、しっとり具合の油分の調整にもバターや生クリームの分量が関係していて、そのあたりもベイキングは化学でおもしろい。
そんなこんなで、しばらくハマると思います。それでは。