profile
引田 舞さん
〈CIRCUS〉 主宰
アパレルのプレスアシスタント、ラジオの構成作家などを経て、現在は夫の鈴木善雄さんと、アートディレクションやブランディング、家具の買い付け・卸しなどを手掛けるユニット〈CIRCUS〉として活動。子ども服ブランド〈tapis〉のディレクションを手掛ける。
Instagram:
@mai__hikita
FAMILY:4人家族(パパ・ママ・長男8歳・長女5歳)
HOUSE TYPE:一軒家/リノベーション
HOUSE DETAIL:居住歴8年/80㎡/1LDK+サンルーム
AREA:東京都
こだわりの住まいについて
思い切りリノベと古家具が生んだ、
愛情を深める暮らし
もともとあった壁や扉を取り払い、リビング、ダイニング、キッチン、寝室をひと続きにして、ワンルームのようなリノベーションを施した引田さん宅。「宿題をしたり、仕事をしたり、家族が食事以外の時間でも自然とキッチンとダイニングテーブルに集まれるようにと思い、この間取りにしました。友人が遊びにきたときも、キッチンが中心の家なので、料理をする人が寂しくならず、みんなで一緒に過ごせるところも気に入っています」。この思い切ったリノベーションに、当初は不安もあったそう。「よく人を招くのに、寝室が丸見えなのはどうかと夫に不安を漏らしたら、『不便だったら、また壁を建てればいいじゃん!』と言ってくれて。確かに先のことはわからないし、決断は重過ぎなくていいかもと納得しました」。住んでから8年間、仕事部屋を子ども部屋にしたり、温室を改装したり、二段ベッドを置くために壁の位置を変更するなど、“どう暮らしたいか”を問いながら、3回のリノベーションを行った。
さらに居心地の良い空間をつくるうえで引田さん宅に欠かせないのが、日本の古家具の数々だ。「ベニヤ板や合板がまだ一般的ではなかった明治〜昭和初期にかけてつくられた日本の古い家具は、裏板にまで良質な木が使われていることが多いんです。現在も存在していること自体が、その丈夫さの証拠。わが家では懐古主義的なニュアンスではなく、ラグやインダストリアルな家具など、さまざまな国や時代のものとミックスしながら楽しんでいます」
LIVING
薪ストーブが繋ぐ、
家族の温もり時間
「都会の住宅では珍しく煙突があったので、夫の長年の夢だった薪ストーブを設置しました。薪を割るなど手間はかかりますが、揺れる炎を見ていると自然と心が落ち着き、わが家にとってはなくてはならない存在に。喧嘩をした日はとりあえずストーブの前に集合して家族で話をします(笑)」。日々の暮らしの中で好きな時間は、夕飯の片付けも子どもたちのお風呂も終わり、寝る前にリビングでゆっくりくつろぐひとときなのだとか。「みんなでSwitchをしたり、ボードゲームをしたり、絵を描いたりして遊びます」
冬でも半袖で過ごせるほど温まる薪ストーブは、イギリスのブランド〈ESSE〉の「THE IRONHEART」。コンパクトながらオーブン室も備え、天板では鍋やフライパンを使った調理もできる。「ゲストが来たときはオーブンでピザを焼くことも! 用意した生地にみんなで好きな具材を乗せてつくると、大人も子どももみんな喜んでくれます」
リビングの一角には、小さなDJブースが。「息子の朝はブルーハーツのCDを聴きながら身支度するのが日課です」
娘さんがつけているコアラのかぶりものは、イギリスの動物園〈London Zoo〉で見つけたというアイマスクとヘッドレストがセットになった珍しいアイテム。シンボリックなリビングの大きな赤い絨毯は廃業する病院から譲り受けたもの。
KITCHEN & DINING
古家具で魅せる、
機能美あふれるダイニングキッチン
古家具や古材をパズルのようにして組み合わせた壁面収納が見事なキッチン。家具は背面にビスを打ち付けて固定。見た目のインパクトはもちろん、見せるものと隠すものの強弱がつけられて、機能面も申し分なし!
昔ながらの和たんすは、キッチン台の上に置くことでモダンな印象に様変わり。コンロに近い左側には調味料を、食器棚に近い右側にはお茶類を収納。
業務用冷蔵庫に高さを合わせたキッチン台。天板は黒のワイルドな質感。「もともと小学校の階段などでよく見る研ぎ出しを天板にしたかったのですが、モルタルに石を流し込んでいざ削り出してみたところ、粉塵がすごすぎて……。内装がほぼ完成段階だったので、急遽そのまま仕上げました。汚れが目立たないのはいいところです(笑)」。
キッチン台のほか、もうひとつ大きな作業台を置くことで調理をスムーズに。「食材をカットしたり、洗った食器を乾かしたり、とっても便利。下の収納もたっぷり入ります」
電子レンジやゴミ捨てスペースは扉をつけて目隠し。燃えるゴミは掃除する手間が省ける、〈山崎実業〉のスタンドタイプのゴミ箱を愛用。
引き出し付きのダイニングテーブルは、もともと工場の作業台として使われていた日本の古いもの。脚に木を継ぎ足して高さを調整した。「引き出しの中にはカトラリーや文房具、メイク道具などがぎっしり収納されています」。ダイニングテーブルの隣には、折り畳みできる軍もののヴィンテージテーブルもプラス。「食事のとき、仕事道具や宿題を一時避難させたり、人が来たときドリンクバースペースとして使えたり、なにかと重宝しています」
最近仕入れた中で気に入った、2段重ねの食器棚。大正〜昭和初期あたりの古いもの。「かなり量が増えて収納に困っていた器やキッチン関係のものがばっちり収納できる大容量。なるべくお皿を重ねすぎないように、棚の間隔を狭めにしたくて棚をつくりました。ゲストを招いて食事をするときは使いたい器をここから選んでもらうことも。みんなワクワク選んでくれます」
食器棚の下の段は、子どもたちのおままごとスポットとしても人気。「キッチンにあるしゃもじやゴムベラなど、本物のキッチン用品をたくさん持ってきて、リアルキッチン遊びをしています。娘のお気に入りは“すのこ”です(笑)」
SUN ROOM
お手伝いもはかどる!
緑と光が心地いいサンルーム
リビングとひと続きにあるサンルーム。半外のような空間でベランダと違い、扉が完全に閉まるため、子どもたちものびのび安全に遊べる。「多肉植物も元気に越冬できるほど暖かいです。コロナ禍はここでテーブルを出してごはんを食べるだけで、とても気分転換になりました。植物の水やり、コンポストに野菜の皮を入れる作業など、時間に余裕があるときは、なるべく一緒に子どもたちと作業をします」
家族が4人になり、生ゴミが増えたことを機に始めたコンポスト。長野のリサイクルショップ〈ReBuilding Center JAPAN 〉と、古着屋〈DEPT〉のコラボプロダクトのキエーロは、古材でつくられていてとってもおしゃれ。「3ヵ所ぐらい掘れる大きなサイズなので、毎日使えるのがありがたいです。油を入れた方が分解が進むらしく、揚げ物のストレスがなくなりました。子どもたちも土遊び感覚でよく手伝ってくれます」
引田さんお気に入りのサボテンは、猫のしっぽのような『ヒモサボテン(ヒルデウィンテラ)』。「小さなピンクの花が咲くのも可愛いんです!」
育てている植物について、『こんなに小さかったんだよ』、『この子はトラックで運んできたんだよ!』とたくさん教えてくれた子どもたち。「水やり=水遊びみたいなところもあって、積極的に植物のお世話をしてくれます」
KIDS ROOM
ざっくり分けで、
親子ともにストレスフリーに
たくさんのオモチャと洋服、二段ベッドが上手にレイアウトされた、6畳ほどのコンパクトな子ども部屋。洋服やオモチャ箱を収納する壁面ラックは、もともと友人がレストランで使っていたもので、段の高さを変更できるのも便利。また、オモチャの収納にはグレーの折り畳みコンテナが大活躍。「下段は息子、上段は娘のゾーン。コンテナごとにヒーローもの、怪獣、人形、乗り物など、大まかにカテゴリー分けだけしていて、とりあえず入っていればOKにしています。『あれどこにある?』と聞かれることがよくあるのですが、一緒に探せないときも『この箱から探して!』とお願いできるのもBOX収納のいいところです」
二段ベッドは〈ACTUS〉の「ASPIRE」。「この二段ベッドを置くためにわざわざ壁をつくり直しました(笑)。大きくなってもセパレートして使い続けてくれたら嬉しいです」。天井は暗いと光るシールを貼って可愛くデコレーション。
水鉄砲やバットなど細長いオモチャ類は、ヴィンテージのファイバーボックスへ。息子さんが生まれてから約8年間使い続けている。
息子さんがお年玉やお小遣いを貯めて自分のために買ったという、お気に入りの〈ジェラシックワールド〉のフィギュア。背中のボタンを動かすと吠えて暴れて迫力満点!
図工室で使われていたような味わいがたまらない、ヴィンテージの木のブロックは、椅子にしたり、子どもたちの遊び道具としても大活躍!「子どものゲストが多いときはこれで即席の椅子とテーブルをつくることもあります」
子ども部屋の入口は2ヵ所。「狭いですが、いずれ子どもひとりひとりに個室がつくれたらいいなと思って、入口はふたつ設けました。わが家は広い個室はあげられないけれど、その分家族との時間を長く過ごせたらいいなと思っています」。壁には息子さんが学童の仲間たちとつくり上げたというジンベイザメの大作も。
家族みんなが無理をせず、ご機嫌に暮らすこと。それこそ、子育てのモットーだと教えてくれた引田さん。家族時間のアイディアや、古家具のコーディネートなどぜひ参考にしてみてくださいね。
photography/Eri Kawamura text/Runa Kitai