profile
吉田安成さん
〈ELEPHANT〉オーナー
グラフィックデザイナーとして活躍後、北欧モダンデザインのヴィンテージプロダクトやアートピースを取り扱うショップ〈ELEPHANT〉を開店。
Instagram:
@elephant_tokyo
FAMILY:3人家族(パパ・ママ・長男2歳)
HOUSE TYPE:ヴィンテージマンション/賃貸
HOUSE DETAIL:居住歴2年7ヵ月/約83㎡/3LDK
AREA:東京都
こだわりの住まいについて
いいデザインと暮らすこと
〈ELEPHANT〉のオーナー・吉田さん家族の住まいは、黒沢隆研究室によって1989年に建てられたマンション。「窓の景観を守るために日本の賃貸では珍しく乾燥機置き場があったり、リビングには造り付けのローカウンターにクッションが埋め込まれていたり。この家は表面的にデザインされたありふれたデザイナーズ物件とは違って、住み手の暮らしが細部にまで設計されている。そう住めば住むほどに気付かされます」
家族で過ごす家時間を充実させるために、吉田さんが心掛けていること。それは“できるだけ妥協せず気に入ったものを買う、使う、飾ること”だという。「本当に欲しいと思えるものに出会えたら、無理してでもできるだけ買いたいと思っています。妥協して買ってしまうとどうしても愛着が湧かないですし、純粋に好きなものとの暮らしは心地いいです。⼦どもにも⼩さな頃からいいものに触れてほしいし、『これは⼤切なもの』だと伝えることで、ものを⼤事にする感覚も養えると思うんです」
子どもにまつわるもの選びは全くの初心者だったという吉田さん。「息子が生まれて、もの選びも新しい世界が開けた感覚。今までは着る服も部屋の中も白や黒など彩度の低いカラーがベースでしたが、子どもにはできるだけたくさんの色を見て、好きな色を探してほしかったので、家の中にもたくさん色が増えていき、気付けば僕も真っ赤なパーカーを着ていました(笑)。息子が選んだ赤いリュックを見て、純粋にかっこいいなと思ったんですよね」
LIVING
大きな窓が気持ちのいい、
のどかな日常を感じられるリビング
吉田さん宅の象徴とも言えるのが、床から天井まで空間いっぱいに広がる大きな窓。「隣家の借景ですが、春は梅が咲いたり、秋は柿が実ったり、自宅にいながら季節の移ろいを感じることができます。何かと忙しい日常の中で、ふと目に入るその景色や、窓から差し込むやわらかな光は心に余裕を生んでくれる。この家に住むまでは味わえなかった感覚です」
リビングの壁一辺には、造り付けのローカウンターが。一部クッションが埋め込まれており、ベンチとしてデザインされている。アームチェアは〈THONET〉の貴重なヴィンテージ。「アームチェアの頭上にある窓辺のライトだけ、明かりが外へ漏れないように、傘が斜めにカットされています」。手前のウォールスカルプチャーは、藁作家のARKOさんの作品。
ユニークな形のオレンジラグは〈IKEA〉と〈Sabine Marcelis〉の限定コレクション。
窓辺には光の反射が美しい、ガラスのフラワーベースやオブジェを陳列。中央のオブジェは父親が息子を肩車している姿をとらえたもので、スウェーデンのデザイナー、エリック・ホグランの作品。手前の大きな座布団は出産祝いでいただいた、スウェーデンのベッドウェアブランド〈マグニバーグ〉のカバーをかけて。
DINING & KITCHEN
とっておきの家具とアートピースに
囲まれたダイニング
リビングと同じ空間にあるダイニングエリア。ひときわ目を引くシカの絵は、スウェーデンの作家、マッツ・グスタフソンの作品。「外国の家で見かける、シカの壁飾りをイメージして飾ってみました」。息子さん用のダイニングチェアは、ピーター・オプスヴィックがデザインした〈ストッケ〉のもの。座面の高さや奥行きを調整することができ、大きくなっても使い続けられるところが◎。ダイニングテーブルの隣にはお気に入りのオブジェやアートピースを並べたディスプレイスペースも。
恵比寿の〈SOMEWHERE TOKYO〉で購入した、〈スキーマ建築計画〉の長坂常さんが手がけたダイニングテーブル。凹凸のあるアンティークテーブルの表面をエポキシ樹脂で覆ったユニークなデザイン。「ダイニングテーブルはこれと言えるものになかなか出会えず、購入するまで5年ほどかかりました」。チェアはイタリアの〈MATTIAZZI〉をチョイス。
こちらも長坂常さんデザインのフルーツボウル。さまざまな木材を組み合わせてつくられている。
ダイニングのディスプレイ棚は〈佐々木家具造形研究所〉でオーダー。「チークとアルミを組み合わせてつくってもらいました。脚のディテールなど細かい部分まで美しく満足です」。棚には、新旧・国籍問わず、好きなものをディスプレイ。とくにお気に入りは、2段目右端のアクリルブロックに山の景色がプリントされた八木夕菜さんの作品。
息子さんが生まれたことを機に購入した、加湿器専門メーカー〈ダイニチ〉の加湿器。「機能性もデザインも妥協したくなくて、かなり吟味しました。広い空間でもしっかり行き届くパワーが助かります」
色使いが可愛いキッチン。奥には洗濯機&乾燥機置き場も併設。
廊下に佇む大きな木彫りのクマは、北海道・十勝の作家、高野夕輝さんの作品。「息子は朝起きるとこのクマちゃんに『おはよう』と声をかけるのが日課です」
KIDS SPACE
子どもの道具も、
長く使える良品を選ぶ
キッズスペースも兼ねているリビング。トミカを広げて遊ぶテレビ台は〈無印良品〉と〈THONET〉のコラボレーション家具。「子どもが使う家具やインテリア雑貨もできるだけ妥協せず、大きくなってからも使えるものを選ぶようにしています。愛着が湧くことでものを大事に使うことも自然と身に付くはず。もの選びは大切だなと思います」
トミカの収納は〈Durable〉のレターケースがジャストフィット。「引き出しごとに色がついているので、息子も色ごとにしまうものを分別できます。大きくなってトミカを卒業しても、デスク周りの収納に使えそうだなと選びました」
かさばるオモチャやぬいぐるみは、〈Vitra〉の大きなコルクボウルにひとまとめに。「息子が生まれる前から持っていたのですが、直径60cmほどあり、ずっと何を入れるか悩んでいて。ようやく日の目を見ました(笑)」
息子さんが大好きなエルモとクッキーモンスターのパペット。「息子はパペットで遊ぶようになってから、話す言葉の数が増えて、成長速度がグッと上がったように感じます」
息子さん用のテーブルセットは、エリック・ホグランがデザインした貴重なヴィンテージ品。
カレンダーはイタリアのインテリアブランド〈DANESE〉のもの。「カレンダーの日付けは毎日息子が率先して張り替えてくれます。数字を覚えることにもつながるのでおすすめです」
BEDROOM
外の目線が気にならないL字窓で
リラックスできる寝室に
しっかり光を取り込めて、かつほどよいおこもり感も味わえる、L字窓がユニークな寝室。〈IKEA〉のベビーベッドは友人からの贈り物。奥のクイーンサイズのベッドは、〈IKEA〉と〈Tom Dixon〉のコラボアイテム。アートピースのような〈HAY〉のミラーがアクセントに。
窓辺の可愛い動物は、デンマークを代表するデザイナー、カイ・ボイスンが手がけたサルとゾウ。
ベッドサイドに吊るされたライトは、モダン照明のトップブランド〈FLOS〉のもの。ベッドリネンはスウェーデン・ストックホルム発のベッドウェアブランド〈マグニバーグ〉のものを愛用。
寝かしつけBGMは、〈ズィーブンザヘン〉のオルゴールから流れるエリック・サティの『ジュ・トゥ・ヴ』。「何十年かぶりにオルゴールを聞いてみたら、とっても耳心地がよくて。このオルゴールは置く場所によって、音の響きが変わるのもおもしろいんです」。〈ミスターマリア〉のミッフィーライトも心地よく眠りに誘ってくれる。「このライトもオルゴールも、息子のおかげで出会えた逸品です」
子ども服をかけているラックは〈無印良品〉。エリック・ホグランがデザインした子ども用のスツールは中に入ったり、乗ったり、さまざまに楽しめる。バッグや帽子を引っ掛けているのは〈artek〉のコートスタンド。
立派な木馬は吉田さんのお父さまの手づくり!「もともと大工で今は息子のオモチャをいろいろとつくってくれます」
子ども視点のもの選びは、知らないことばかりでリサーチにもたくさん時間がかかるけれど、それがまた楽しいと教えてくれた吉田さん。大人も子どもも納得できる雑貨や家具のセレクトなど、ぜひ参考にしてみてくださいね。
photography/Takanori Sasaki text/Runa Kitai illustration/Chika Osawa