カッとなって怒ってしまう……。
子育て中はどうしてこんなにイライラするの?
「怒り」という感情は誰にでもあるもので、「こうあるべき」という自分の思いや理想が、その通りにならなかったときに生まれます。子どもに対してであれば、「ごはんは座って食べるべき」「この時間には寝るべき」「公共の場では騒ぐべきではない」といった、親が理想とする「〜べき」がたくさんありますよね。それが思い通りにならなかったときに、怒りの感情が生まれるのです。さらに、体調が悪かったり精神状態が不安定だとマイナスの感情がさらに大きくなってしまいますから、夜泣きがひどくて眠れない、子育てと仕事に追われてイライラしているといった、子育て中のストレスが、怒りを大きくさせる一因にもなっています。
自分の子どもに対して
強く叱ってしまうのはどうして?
職場の人に対しては温厚でいられるのに、自分の子どもやパートナーに対してはイライラ……。怒りは誰に対しても持つ可能性のあるものですが、身近な対象ほど強くなる傾向があります。そして、子どもに対して怒りが強くなるのは、「自分の子どもは思い通りになるのでは?」と無意識的に錯覚していたり、「~あるべき」という期待も大きくなりがちだからなのです。本来であれば、子どもは個人であって、自分の分身ではありませんから、思い通りになるはずがありません。ですが、自分たちが生み出した存在であるがゆえに、「自分と同じように考えるもの」「親の言うことは聞くもの」だと勘違いしてしまいがちなのです。すると「〜べき」が何度か裏切られると、「なんでわかってくれないの!」「何回言えばわかるんだ!」と、自分の子どもなのに思い通りにならないという葛藤から、腹が立ってしまうのです。
無駄に怒らないようにするには
どうしたらいい?
怒りは誰もが持つ感情ですし、必要なときに怒ることは大切なこと。ですから、腹が立ったときは怒ってもいいのです。けれど、カッとなって、暴言を吐いたり、暴力的な行為をしたり、物にやつあたりをするのは絶対に避けましょう。罪悪感に苛まれるばかりか、子どもとの信頼関係が崩れることも考えられます。ですから、怒りに振り回されないように、イライラと上手に付き合うことが大切。そこで、怒りにまかせた行動をしないためのポイントを紹介します。
point 1
怒りを記録する
怒りを感じたことを記録しましょう。記録をして言語化することで、自分の怒りの傾向がわかるようになります。また、「この〜べきがやぶられたから怒りが生まれたんだな」と自己分析できるようになります。疲れている、睡眠不足、生理中など、精神状態や体調も書いておくと、どのような状態ときにイライラするのかもクリアに。「毎日がむしゃくしゃする」など、さまざまな要因が重なって怒りが言語化できないこともあるため、怒りの記録をつけられるようになることが、イライラをコントロールする第一歩なのです。また、嬉しかったことや楽しかったことをメモしておくのも◎。小さな幸せに気づけるようになることで幸福感がアップします。
point 2
怒りに点数をつける
怒りは目に見えないため掴みどころがありません。ですから振り回されてしまいがちなのです。怒りの度合いを数値化することで、怒りを客観的に捉えられるようになり、何に対してどの程度の怒りを感じるのかわかるようになります。軽くイラッとする程度を1〜3 、カチンとくる中程度を4〜6、人や物にあたるような強い怒りを7〜9、頭が噴火するような最大級の怒りを10とします。「服を脱ぎっぱなしにする2点」「歯を磨いたと嘘をつく4点」「食べ物を投げる7点」のようにです。POINT1で怒りを記録した際に、その度合いを書いておくのもおすすめ。「服を脱ぎっぱなしにするのは2点だけど、今日は仕事で疲れてイライラしていたから、必要以上に怒ってしまった」のように、怒りを自己分析できるようになります。
point 3
怒りが生じたら6秒やりすごす
イラッとした瞬間、すぐに口を開くと、どうしても言いすぎたり余計な言葉を発してしまいがち。怒りが生じたとしても、6秒経てば理性が働き出し、衝動的な行動を起こしにくくなります。ポイントは、ただ6秒数えるのではなく「6秒やりすごす」と考えること。イラッとしたときに「この怒りは何点だろう」と、点数をつけることに意識を向けるのがポイントで、点数を思い浮かべている間に6秒経つものです。ですが、カッとなったときは、冷静にやりすごせないこともありますよね。感情をコントロールするのはトレーニングが必要ですから、上手くできなかったとしても、次にできるようになればOKです。
怒ること怒らないことの
境界線ははっきりさせておくべき!
子どもが同じことをしたのに、怒ったり怒らなかったり……。気分や体調によってコロコロと態度を変えていると、子どもは「悪いことをしたから怒っている」のではなく、「機嫌が悪いから怒っている」と勘違いします。すると、機嫌がいいのか悪いのか、ということばかりに注目し、親の顔色をうかがうようになることも……。気分や体調によって態度を変えないためには、「怒る」「怒らない」の境界線を決めておくことが大事。図の三重丸に当てはめて考えてみましょう。
例:子どもがオモチャで遊んだあと……
①OKゾーン(自分が理想的とする状態)……言わなくても遊んだらすぐに片づける。
②許容ゾーン(イラッとするけど許容範囲)……「片づけて」と言えば片づける。
③NGゾーン(どうしても許せない状態)……何度言っても片づけない。
親としては①が理想ですが、子どもは完璧にはできませんし、私たち大人だって同じです。①の領域しかないと子どもに完璧を求めようとしますから、できないとイライラしがち。そこで②の領域を設けるのです。すぐに片づけなくても「言えば片づける」「テレビを見終わったら片づける」であればよし! 機嫌がいいときは②が広がっていき、機嫌が悪いときは狭くなっていきがちなので、境界線はブラさず一定にしておくことが大切。そして、②の境界線を子どもに言葉で伝えておきましょう。「遊んだオモチャはすぐに片づけようね。すぐにできないときは、せめて1回注意したら片づけるようにしてね。何回言っても片づけないときは怒っちゃうよ」のようにです。
怒ることが必要なときも!
どのように叱ったらいいの?
感情にまかせて怒っても子どもには伝わりません。「どうしてできないの!」「なんで〇〇しないの!」と言ったところで、「なんでだろう?」と思うだけなのです。他には、「ちゃんとして!」「すぐに!」という言葉も使ってしまいがちですが、大人が期待する「ちゃんと」「すぐ」と、子どもが思うそれとは違うことが多いものです。ですから、してほしいこと、してほしくないことを具体的にリクエスト(要望)として伝えるのがポイント。オモチャを散らかしたままにしているときであれば、「そのままにしておくと誰かが踏んで痛いし、オモチャが壊れちゃうよ。だから片づけようね」のように、どうしてダメなのか、どうしてほしいのかをはっきり伝えます。
また、大人に「〜べき」があるように、幼いながらも子どもにも「〜べき」があります。ですから、友だちと喧嘩したときや、傷つけるようなことを言ってしまったときは「なんでそんなことしたの!」と怒るのではなく、「本当はどうしてほしかったの?」「どんな気持ちだったの?」「どう言えばよかったと思う?」と、子どもの「〜べき」を聞き出して、そのうえで、どうして欲しいのかを伝えましょう。親ときちんとコミュニケーションがとれると、子ども同士でもコミュニケーションがとれるようになっていくものです。
イライラと上手く付き合う
おすすめの本3選
イライラが連続する子育てでは、言いすぎてしまうことも多々あります。けれど、怒ること=悪いことではありません。言いすぎたり、感情にまかせた怒り方をしたりしないように、怒りと上手に付き合うことが大切なのです。それが、子ども心の健やかさを育むことにつながり、さらには、親の心の健やかさを保つことにもつながっていくのです。