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    【子どもの性教育、何からはじめる?】知っておきたい子どものこと Vol.12

    【子どもの性教育、何からはじめる?】知っておきたい子どものこと Vol.12

    学校での性教育が始まるのは、小学校の4、5年生くらいからですが、実はもっと幼い頃から教える必要があると言われています。それはどうしてでしょうか? 未就学児にとっての性教育の必要性と、家庭での伝え方をとにかく明るい性教育「パンツの教室」協会代表理事の、のじまなみさんにお聞きしました。
    教えてくれた人
    のじまなみさん
    性教育アドバイザー
    とにかく明るい性教育「パンツの教室」協会代表理事
    看護師として泌尿器科に勤務した後、子育て中の出来事が転機となり、とにかく明るい性教育「パンツの教室」協会を開校。全国の企業や行政機関、青年会議所、小・中学校などで講演を行うほか、性教育インストラクターの養成にも携わる。「赤ちゃんはどこからくるの? 親子で学ぶはじめての性教育」(KADOKAWA)など著書も多数。
    CONTENTS
    1. 未就学児からの性教育はどうして必要?
    2. 未就学児にはどのようなことを教えたらいい?
    3. 小学生になったら教えてあげたいこと
    4. 読者ママが「子どもの性教育」について のじまなみさんへ質問!
    5. のじまなみさんおすすめ 性教育を伝える絵本

    未就学児からの性教育はどうして必要?

    デジタルネイティブと言われる今の子どもたちは、生まれながらにしてインターネットやスマートフォンがすごく身近。また、家事の合間やぐずったときに動画を見せたりと、デジタルデバイスがベビーシッター代わりになっているご家庭も少なくありません。子どもだけで動画を見る機会もありますから、誤って大人向けの動画サイトや、アダルトサイトにアクセスしてしまうこともありえるのです。

    にも関わらず、日本では、動画サービスへの法の整備が追いついていない状況。そのうえ、豊かな性教育がなされているかというと、そうとは言えませんよね。未就学児ではなおさらです。動画で見たことを、保育園や幼稚園の友達にしてしまうことも考えられますし、大人がしてしまったら痴漢行為にあたるようなことを、未就学児がしてしまっているという現状も。なんとなくの興味と無知さによって、してはいけないことをしてしまう可能性があるのです。だからこそ、性についての正しい情報をきちんと伝え、向き合い方を教えてあげることが必要です。

    未就学児には
    どのようなことを教えたらいい?

    ①性教育は
    “愛情を伝える”ことからスタート

    性教育というと、男女の体の違いを教えることだとイメージしがちですが、未就学児にはじめに伝えるのは、「あなたも大事。みんなも大事」ということ。動画で見たことを友達が嫌がるのにしてしまうのは、相手が大事な存在だと気づいていないから。ですが、相手を大事だと思えるようになるには、まず自分自身が大事な存在であると認識することが必要です。それには、大人が愛情を伝えることがいちばん! 「あなたのことが大好き」「今日も可愛いね」といった、毎日の声かけで愛情は伝わるものです。相手を大事にする、誰かを傷つけてはいけない、そういった思いやりの気持ちは、大人から愛情を受け取り、子ども自身が自分は大事な存在であると気づくことから生まれるのです。

    ②パンツを一緒に洗いながら
    プライベートゾーンを伝えよう

    2、3歳になってパンツをはくようになると、おもらしをしてしまうこともありますよね。実はそのときが性教育のチャンス! お風呂に入ったときにパンツを一緒に洗いながら、男女の体の違いや、プライベートゾーンが大切な部分であることを話してみましょう。成長期になると、女の子は生理、男の子は精通によってパンツを汚すことがありますから、第二次成長期の話しをするのもいいでしょう。そのあとに、絵本を使って体の仕組みを教えてあげるとスムーズ。子どもはすぐに忘れてしまうため、幼い頃はとくに、繰り返し教えてあげることが必要です。

    ③心地いい距離感が
    人によって違うことを教えよう

    お母さんのおっぱいを触っているから、友達にもしてもいいと勘違いしてしまう……。これは、子どもが相手との距離感を理解していないから起きること。心地いい距離感が人によって違うということは、大人では理解できますが、幼い子どもにはわかりにくいもの。ですから、「ギュッとされて嬉しい人と怖いと感じる人がいるんだよ」「お母さんとあなたで心地いい距離感、お友達とあなたで心地いい距離感は違うんだよ」のような感じで、心地いい距離感が人によって異なることを教えてあげましょう。

    ④相手に触れるときは
    許可をとることが必要

    相手との距離感を伝えたら、次は子ども自身に置き換えて説明します。「あなたはどこまでだったら許せる?」「勝手に手をつながれたら?」「急にハグされるのは?」「勝手に体を触られるのは?」と、具体例を出してあげると、想像しやすくなるでしょう。その後で、誰かに触れたいときは「手をつないでもいい?」「ぎゅうしてもいい?」と必ず許可を取り、「いいよ」という返事を待ってから、握手をしたり手をつないだりすることを教えます。ただし、子どもですからそのときの気分で、ノーと言われることもありますよね。それも考慮して、「嫌いだかやめて、と言ってるのではない」「嫌だと言われたらやめる、それも優しさ」ということを伝えるのもポイント。

    小学生になったら
    教えてあげたいこと

    小学生になるとひとりで行動する機会がぐんと増え、さまざまな情報も入るようになります。トラブルに巻き込まれないためにも、「知識」というお守りを持たせてあげましょう。

    ①正しい防犯の知識を
    身につけよう

    「知らない人には決してついて行かない」ということを必ず伝えたうえでしておきたいのが、通学路の確認。入学したら一緒に歩いてみましょう。暗くなると辺りの雰囲気が一変しますから、朝と夕方に何度か歩いてみるのがおすすめ。歩きながら、「子供110番の家」、コンビニや商店、図書館、警察署など、助けを求められる場所を教え、何かあったときは「助けてくださいって逃げ込むんだよ」と、困ったときはすぐに助けを求められることも伝えます

    保護者の携帯番号や、自宅の電話番号を伝えておき、公衆電話の使い方も覚えさせておくといいでしょう。公衆電話は、一度で構わないので、子どもにかけさせてみてください。合わせて、警察や救急へ通報する、緊急用の赤いボタンのことも教えてあげましょう。

    ②インターネットとの
    関わり方を教えよう

    小学生になると携帯電話を持つ子どもが増えますよね。持たせている携帯が、さまざまな情報にアクセスできないようにしていても、本人以外の携帯やパソコンからアクセスしてしまうことも。「悪口をインターネット上に書き込んではいけない」「自分の裸の写真をふざけて送ってはいけない」など、 インターネットを利用する際のルールを合わせて教えること。大人にとっては当たり前のことでも、それを知らないのが子どもなのです

    ③小学校4年生を迎える前に
    性教育を

    小学校4、5年生になると、ホルモンの影響で、性的なことに興味が湧くようになります。それは自然なことなのですが、そのタイミングで性にまつわる正しい知識がなく、さまざまな情報に触れてしまうと、「性=いやらしいこと、汚いこと」というマイナスイメージが植え付けられてしまう可能性が。日本ではアダルトサイトに簡単にアクセスできるにも関わらず、性教育がとても遅れています。セックスによって受精に至る過程はもちろん、避妊の仕方や妊娠の過程も、学校の性教育では教えてくれません。思春期が訪れたときの手助けになるように、未就学児や小学校の低学年から、正しい知識を伝えたいものです。

    読者ママが「子どもの性教育」について
    のじまなみさんへ質問!

    Q.5歳の娘がいます。子ども向けの性教育の絵本を読んであげたのですが、興味を示しません。まだ早かったのでしょうか? Aさん(5歳女の子のママ)

    A.未就学児にはじめに読み聞かせるなら、一般的な性教育の絵本よりも、愛情が伝わるようなものがおすすめ。「生まれてきてくれてありがとう」、それを伝えることからはじめましょう。また、体の仕組みや性行為について伝えたい場合は、クイズ形式の絵本など、楽しみながら読み進められるものはどうでしょう。子どもはクイズが大好きですし、楽しみながら読むことで難しいこともスムーズに覚えられます。性に関しては大人の方が敏感なので、大人が恥ずかしいと感じると子どもはそれを察知してしまうもの。クイズ形式の絵本なら、親の恥ずかしさも軽減されるのではないでしょうか。


    Q.6歳の息子に「保育園で女の子とチューしたよ! ママとパパはしたことある?」と聞かれて返答に困りました。してはいけないことなのか、でも海外の人はするし……。どのように答えたらいいのでしょう? Mさん(6歳男の子のママ)

    A.4歳以上の子どもに対しては「してはいけないこと」と教えます。チューはもちろん「お尻を触る」「下着を脱がす」「自分のおちんちんを見せる」など、大人がすると痴漢にあたる行為は絶対にしてはいけません。それはトラブルを回避するためです。相手に嫌な思いをさせてしまう場合もありますし、悪意ある大人がその行為を見ていた場合、「この子はチューならしてもいい」と勘違いし、トラブルに発展する可能性も。「ママとパパはしてるよね」を聞き返された場合は、好きな人同士や結婚している人、チューをしたあとにきちんと責任が持てる人はしてもいい、ということも合わせて伝えましょう。


    Q.プライベートゾーンの話しはしたのに、男兄弟ふたりで「ちんちーーん!」と爆笑しながら家の中を走り回っています。人に見せるのはダメと教えているので止めたいのですが、人前ではないからいいのでしょうか? Oさん(10歳・6歳男の子のママ)

    A.男の子兄弟のご家庭ではよくある光景かもしれませんね。ピンチはチャンス! せっかくですから性教育の話をしてあげましょう。パパも一緒に遊んでいるなら、家族全員で話し合ってみるのもおすすめ。ただし「おちんちんを見せる行為は、人前では決してしてはいけない」ということは何度も言い聞かせること。「人前では?」「見せちゃだめ!」、「お家では?」「オッケー!」、「お外では?」「見せません!」と親が確認し、答えを子どもに言わせることで、人前で見せてはいけないということを、しっかり認識できるようになります。


    Q.10歳の息子が、水着を着ているお姉さんに興味を持ち始めました。幼馴染の女の子とお泊まりをしていますが、ちょっと心配。お姉さんには興味があるけど、同級生には興味がなさそうです。 Cさん(10歳男の子のママ)

    A.同級生に興味がなさそうというのは、親の思いすごし。お姉さんに興味があって、同級生に興味がない、それは本人でなければわかりません。10歳は性ホルモンが分泌しはじめる時期。女の子の方が性的なことに関心があったりもする年代です。生理が始まっている子もいますし、妊娠する可能性がゼロではないのです。そんなことありえない、それがありえないのです。ただし、お泊まり自体は悪いことではないので、ふたりきりで寝泊まりしたり、一緒にお風呂に入るのを避けるようにすれば構いません。


    のじまなみさんおすすめ
    性教育を伝える絵本

    赤ちゃんはどこからくるの? 親子で学ぶはじめての性教育
    のじまなみ・著、林 ユミ・絵/幻冬社
    幼い頃から知っておきたい、体と性のふしぎを親子で一緒に学べる一冊。子どもの「なぜ?」「どうして?」にわかりやすく楽しく回答。

    いのちのおはなし
    日野原重明・文、村上康成・絵/講談社
    医師である著者が、10歳前後の子どもたちを対象に小学校で行ってきた〈いのちの授業〉。そのひとコマを描いた絵本。

    うまれてきてくれてありがとう
    にしもとよう・文、黒井 健・絵/童心社
    絵本を通じて親から子へメッセージを伝えることで、子どもの自己肯定感を育み、かけがえのない命の誕生を親子で喜びあう一冊。

    おへそのあな
    長谷川義史・作/BL出版
    赤ちゃんは、お母さんのおなかのなか。おへその穴から見えるのは、生まれてくることを待ち望む家族たち。命の誕生を楽しく描いた絵本。


    このように性教育は、男女の体の違いを教えるだけでなく、相手を思いやる気持ちも伝えて育む、“コミュニケーション教育”という側面もあります。さまざまな情報が溢れるこの時代においては、自分の身を守る手段にもなり得るため、偏った情報に触れてしまう前に、性についての正しい知識を子どもに伝えることが大切です。

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    edit/Masayo Okegawa illustration/Chika Osawa
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