歯並びにまつわる
メリット・デメリット
歯並びのよさは歯磨きのしやすさにつながります。すみずみまできれいに磨くことができるため、虫歯や歯周病になりにくいというメリットがあります。反対に歯並びが悪いと磨き残しが発生するため、虫歯や歯周病の心配も。一度虫歯になって治療した歯は、再び治療が必要になる可能性がありますし、治療のたびにダメージを受けます。歯の根が悪くなったり、歯周病が進行して最終的に抜歯をしてしまうと、差し歯やインプラントが必要になり、治療費も高額に……。幼少期に歯並びをよくしておくことは、生涯にかかる治療費を安く抑えられる可能性が高いというメリットも。きれいな歯並びは、パパやママがお子さんにあげられる最高のプレゼントのひとつになるでしょう。
また、歯並びは顎の大きさも関係しています。生活習慣や食生活によって顎が小さくなることで、歯が生えるスペースが足りなくなり、ガタガタとした歯並びになってしまうお子さんが増えています。そのうえ、顎が小さいと舌が後ろに押しやられてしまい、呼吸する気道が狭くなるため、睡眠時無呼吸症候群のリスクが上がるとも言われています。睡眠の質の低下は、日中の眠気にもつながります。つまり、顎の成長を妨げないように生活習慣や食習慣を気にかけると、歯並びがよくなるとともに睡眠の質も向上するということ。日中の集中力が高まり、その子が持っている能力を100%発揮しやすくなると考えられます。
どうして歯並びが悪くなるの?
歯並びには遺伝が影響しているのはもちろんですが、生まれてからのさまざまな習慣も大きく関係しています。つまり、生活習慣や食習慣に配慮すれば、歯並びはよくなる可能性がある、と捉えることもできるのです。それでは具体的に何が影響しているのでしょうか。
口呼吸
アレルギー性鼻炎や風邪などによって鼻が詰まったり、激しいスポーツを習慣的に行ったりして、口呼吸が常習化していると、常に口が空いた状態に。舌が上顎につかない状態が長く続きますから、舌の刺激が上顎に伝わらず、上顎の成長が抑制されてしまいます。顎が小さいと永久歯が生えてくるときに十分なスペースが確保できないため、歯が互いに押し合わされたり傾いたりしてしまうのです。
食生活
固い物を食べて、正しい飲み込みができるようになると、舌が上顎にベタっとついて、上顎の成長を促進させます。赤ちゃんの頃は、のどにつまらせないようにと小さく切って提供しますよね。ですが、大きいものが食べられる年齢になっても小さく切って提供し続けると、前歯を使う機会が少なくなり、上顎の成長に影響が。パンや麺類など、柔らかいものを食べる機会が増えたことも、顎の成長が抑制される原因とも言われています。
ほかには、ストロー飲みを長く続けることも歯並びが悪くなる原因のひとつ。ストロー飲みはほっぺの力で飲み込みますが、通常、物を飲み込むときは、ほっぺの力は使わずに、舌が上顎につくような飲み方をします。ストロー飲みが習慣化していると、つばを飲み込むときもほっぺの力で飲み込むようになってしまいますから、内側に力がかかり、歯を前に押し出したり内側に倒す力がかかってしまうのです。コップ飲みができようになったら、ストロー飲みはできるだけ避けたいところです。
姿勢
1本の歯は、1.5gというわずかな力で動いてしまうもの。頭の重さは、未就学児ですとだいたい3kgぐらいはありますから、頬杖をついたりして顎に力がかかると歯並びに影響したり、顎が痛くなったり、歪んだりすることも。さらに、座ったときの姿勢も影響。猫背や椅子に斜めに寄りかかるクセがあると、空気の通り道である気道が細くなり、呼吸をしやすくするために口呼吸に。口呼吸が歯並びへの影響は前段でお伝えした通りです。
指しゃぶりや爪噛み
歯はわずかな力で動いてしまうため、爪噛みや指しゃぶりも歯並びに大きく影響します。前歯に力がかかり続けると出っ歯になるかもしれませんし、片側の歯だけで噛むクセがあれば、歯も片側だけがずれやすくなってしまうのです。
歯並びをよくする
食習慣・生活習慣のポイント
歯並びには顎の大きさはもちろん、舌や唇の筋力も関係します。舌が上顎を押し広げる力が弱いと、顎が小さくなって歯が生えるスペースが足りなくなる可能性が高くなり、唇の筋力が弱いと、歯が広がりやすくなり、すきっ歯や出っ歯になる可能性があります。このように、きれいな歯並びには、舌が上顎を押し広げる力と、歯が必要以上に広がらないように唇がサポートする力とのバランスがとれていることが大切。このバランスを整えるための、舌・唇のトレーニングをご紹介します。
乳児期はおっぱいを正面から深く咥えさせる
授乳は、上顎と舌をトレーニングするファーストステップ。赤ちゃんは乳首の根元を上顎と下顎で挟み、舌で乳首全体を上顎に押しつけて絞り出しています。乳首を正面から深く咥えさせるようにすると、上下の顎が均等に成長し、舌と唇もしっかり使うことができます。ミルクの場合は、上顎の成長によいとされている乳首が販売されていますから、それを使うのがおすすめです。
幼児期は自らかぶりつくことで唇の力をつける
離乳食や幼児食をあげるとき、口の中までスプーンで運んで、斜め上に抜くような食べさせ方をしてはいないでしょうか。それだと唇の力がつかないので、自分から咥えることが大切です。上顎と下顎の力が均等にかかるように、スプーンを水平に持ち、唇の近くまで持っていき、自分で咥えるように促します。その状態でパクッと口を閉じてスプーンを引き抜くことで、唇の力が自然とついていきます。
スプーンで食べるのが上手になってきたら、大きな食べ物にトライ。子どもが自分でかぶりついて引きちぎることができるように、はじめはやわらかめのおにぎりやスライスした果物などからはじめましょう。大きなものが食べられる年齢になったら、リンゴを皮付きであげたり、トウモロコシのようにかぶりつくものをあげたりして、前歯を積極的に使うようにします。ほかには、奥歯ですりつぶす力を使うために、肉や繊維質の野菜やキノコ類を、積極的に料理に取り入れるのもおすすめです。
鼻詰まりをしっかりケア
ここまで何度もお伝えしたように、口呼吸は上顎の成長に大きく影響します。心地よく呼吸できるように、鼻詰まりはこまめにケアしてあげましょう。電動の吸引機を使ったり、鼻用の生理食塩水のスプレーで、潤してあげるのもおすすめです。アレルギーの心配がある場合は、一度耳鼻科を受診してみるのもいいでしょう。
簡単! 舌・唇のトレーニング
舌をベーッと出して、上下左右に大きく動かします。ママやパパがはじめにお手本をみせてあげ、「同じようにやってみて」と真似っこ遊びの感覚で、子どもに促してみましょう。唇のトレーニングは、唇を大きく突き出して「うー」、大きく横に広げて「いー」を繰り返すだけでOK。簡単ですよね。
お子さんが年長さんくらいになったら、舌の正しい位置を教えてあげましょう。口を閉じている時や物を飲み込むときなど、舌の先端が上の前歯のすぐ後ろにある「スポット」に収まっているのが理想的。口を大きく開けて、舌で前歯のスポットを1分間タッチ。こうすることで、舌の先の正しい位置を覚えることができます。
ほっぺの筋肉が硬くなっている場合は、マッサージでほぐしてあげましょう。手を清潔にして、ほっぺの内側に親指を入れ、広げるように揉みほぐしてあげます。
上顎の成長は8歳までに80%が完了し、永久歯への生え変わりが完了する12歳ごろには、上下の顎の成長はほぼ完了すると言われています。顎が成長している間に、歯並びがきれいになる食習慣や生活習慣を、自然と身につけられるようにしたいものですね。