ファイナンシャルプランナー、消費生活アドバイザー
高校や大学など進学する際には、
まとまった額の教育費が必要に
公立なのか私立なのか、また進学先や選ぶ学部によっても教育費は変わりますが、高校と大学の7年間でかかる学費は、およそ1,000万円程度と言われています。全額まとめて用意する必要はないのですが、これだけの負担増はその年の年収だけで補えるものではありません。さらに入学初年度には、まとまった額の教育費がかかりますから、事前にある程度準備しておく必要はあります。それでは、実際にいくら準備したらいいのでしょうか。
高校入学時をタイムリミットに
学費準備をスタート
高校と大学にかかる教育費は、入学金と学費に分けて準備しておくのが基本的な考え方です。入学金はできる限り進学のタイミングまでに準備しておきたいところ。さらに学費の何割かを上乗せし、受験勉強のための塾や予備校のコストも加算されますから、その費用も事前に準備しておくと安心です。このように高校入学以降にはまとまった教育費がかかるので、大学の学費を準備していく余裕がなくなります。子どもが幼いうちに「高校入学までにいくら用意する」というイメージを持ち、それを夫婦で共有しておくことが大切です。
幼保無償化のタイミングが
学費準備のはじめどき!
高校に入学する目前になって、入学金や学費をいちから準備をするのは不可能に近いことです。それではいつから教育資金を貯めはじめたらいいのでしょう。
みなさんは、幼保無償化をご存知でしょうか。3歳以上のお子さんがいらっしゃるご家庭はおそらくご存知だと思いますが、2019年10月からスタートし、3~5歳児クラスのすべて子どもの、幼稚園・認可保育園・認定子ども園などの利用料が無料になるという制度です。赤ちゃん期はなにかと出費がかさみますから、学費準備をスタートするとしたら、幼保無償化のタイミングから行うのがおすすめです。高校入学までをタイムリミットと設定するのですが、前段でもお伝えした通り、中学生になると塾代がかかることもありますよね。つまり、高校入学をタイムリミットとしつつも、幼保無償化がはじまったタイミングから小学校の卒業までの間に、ハイペースで準備をするのが理想的です。
2人目以降の学費準備のポイント
子どもが2人・3人と増えれば、単純に教育費は2倍・3倍とかかってくるもの。ですから、2人目以降は、より計画的にお金の準備をするのがおすすめです。
1.アプリで家計をクリアに! 固定費の見直しをしてみよう
学費を準備するにあたって必要なのが、現状、何にいくら使っているのかをクリアにすること。それができれば、毎月の貯蓄額が明確になります。今の時代、支払いが多様化しているので、支出が不明瞭になりがち。そこで活躍するのが家計簿アプリです。銀行口座の入出金明細を反映できるのはもちろん、複数のクレジットカードの紐づけもでき、電子マネーにも概ね対応。現金で支払ったときは、レシートをスマホで撮影すると、品名や金額などを自動で読み取ってくれます。家計がクリアになれば、必要なものと不必要なものも明確になりますよね。なんとなく毎月自動引き落としにしているものはありませんか? それを洗い出して、不要なものは解約するといった選択も。
【山崎さんおすすめ家計簿アプリ】
●Zaim https://zaim.net/
●マネーフォワード ME https://moneyforward.com/
●Moneytree https://getmoneytree.com/jp/home
2.児童手当は貯金すれば、高校・大学の入学金が賄える!
中学校卒業までの児童を養育している家庭には、児童手当が支払われます。0~3歳未満は月額一律¥15,000、3歳以上小学校修了前までは¥10,000(第三子以降は¥15,000)、中学生は一律¥10,000。これは約200万円の給付に相当し、もしまったく手をつけずに子ども名義の通帳に入金したら、高校と大学の入学金がここから賄えるのです。ですが、教育費が比較的かからなくて済むと言われる小学生のときも、入学準備や進級のタイミングなどで、ある程度まとまったお金が必要になることもあるでしょう。児童手当は「できる限り貯金をする」というスタンスでも構いません。
3.満足度を下げない節約術で、支出を楽しくカット!
シンプルな話ですが「収入ー支出=貯蓄」になります。児童手当以外に学費として毎月少しずつでも貯めるのであれば、支出を減らす、つまり節約することも考えましょう。貯蓄を増やす方法といえばキャリアアップが思い浮かびますが、そう簡単ではありません。実は年収を増やすことと同じくらい価値があるのが節約です。同じ生活を、より低コストでやりくりできれば、確実にお金が残るようになるからです。節約というと、ケチることだと誤解されがちですが、なんでもかんでも切り詰めるだけが節約ではありません。それはそれでお金は貯まりますが、家族の幸福度は下がってしまいますよね。メリハリをつけ、満足度やクオリティはできるだけキープしつつ、全体として低コストのやりくりが実現できるようがんばってみてください。ときどきはごほうび予算もOKです。楽しみながらお金が貯められるよう節約をポジティブに捉えてみましょう。
頭の片隅に置いておきたい、
奨学金という選択肢
奨学金というと、学費が準備できずにやむを得ず利用する手段だと思われがちですが、今の時代、もう少し前向きに考えてみてもいいのではないでしょうか。高齢出産が年々増加傾向にあり、子どもの学費はなんとか準備できたが、自分たちの老後の準備が間に合わないままリタイアする、という夫婦が増えています。だからといって老後の仕送りを20代の子どもに求めるのは無理な話です。自分たちの老後資金の確保も同時に検討し、学費の一部について奨学金を活用してもらうことも検討してみましょう。「私たちの老後については経済的支援は求めないから」という説明も含めて話をすれば、子どももきっと納得してくれるはずです。もちろん、できる限り学費準備をしてあげたいのも親心。だからこそ、早く気がつき学費準備をスタートさせることが大切なのです。
大学に進学するだけでなく、就職したり、専門学校に入学するという選択肢もあるでしょう。まずは進学のタイミングで、子どもがどうしたいのかを、きちんとコミュニケーションをとりながら話し合うことが大切です。ですが、話し合った時点から教育費を貯め始めるのは無理があるので、子どもが幼い頃から少しずつでも教育資金の準備をしておくのがおすすめです。